「女の人のファンが喜ぶことって何すか?」
「おお!影山!ついに女の子のファンできたのか!」
「いや、ずっと俺のファンらしいんで」
菅原は電話先で影山がドヤ顔してるのが目に浮かぶ様だな、と笑みを溢す。
「なんつーか、その、喜んで、もらいたい。デス」
今年の春からVリーグデビューした可愛い後輩からの一発目の電話がまさかファンサービスの相談とは夢にも思っていなかったため、菅原も驚いてしまう。
菅原は「そうかそうか」と嬉しそうに影山の話を聞いている。
「とりあえず会場で見つけてあげたら嬉しいんじゃね?あ、今日そこにいましたよね、とかどう?お前に出来るかなぁ」
「っス、やってみます!」
「おー、頑張れ頑張れ!菅原さんは影山のことを応援してるぞ〜」
「アザス!」
(よし、明日早速みょうじさんに言ってみよう)
と思い菅原さんの電話を切る。が、よくよく考えてみればみょうじはいつも同じ様な席に座ってることが多い。それなのに今日あそこにいましたよね?って言って喜ばれるものなのか?いまいちファンってやつの気持ちがわからねぇ。と影山は不安になる。
次の日の試合前はいつもより少しソワソワしてしまい、牛島に「緊張してるのか?」と声をかけられる始末だった。
いざ試合会場に入り、アップをしながら軽く会場内を見渡す。そして、いつもの席あたりにみょうじの姿が見えないことに気がついた。
(ヤベェ、いねぇ)
なんとかして試合開始までに見つけなくては、試合が始まると気づけば試合終了のホイッスルが鳴るので影山に残された時間はあと数分だった。
あまりにもキョロキョロするのは不自然だと思い、少しずつ会場内を探してはみるが見つからない。
今日に限ってどうして、と言う気持ちはあったがいざ試合が始まるとスイッチは勝手に切り替わりもうみょうじのことは頭から消えていた。
第1セット中盤、影山のサーブ。サーブトス前にふと視線を感じ、目線を客席に向けるとみょうじの姿を捉えた。
「見つけた」
と、少し嬉しくなったと同時にそのまま影山はボールを持っている手を真っ直ぐみょうじの方へ向けて指を指す。
(ぜってぇサービスエース取るからそっから見てろ)