追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


インターハイ予選





お手洗いを出て角を曲がり、どんっと衝撃が来たかと思えば尻餅をついていた。

「あいたた...」
「うわ!えっ!スイマセン!怪我!だいじょぶすか?!?!」

転んでしまったことより、その声の大きさと持ち主にわたしは驚いて声が出せなくなる。目を見開いて口をパクパク開閉して「え、あ」と挙動不審な態度をとっていると目の前の男の子はわたしが怪我で動けないでいると勘違いし手を差し出してくれる。

「痛かったですよね?!ほんとすいません!!!!」
「いや、その、だ、大丈夫です!」
「どっか怪我してないすか!」
「怪我、してないです」
「よかった〜!!!」

そう言って満面の笑みで笑ってくれる男の子の笑顔が眩しくて目が眩みそうだった。この子は、コートにいる時と今と何も変わらず元気なんだなと思わずこちらも笑顔が伝染する。

「オネーさん誰かの応援すか?」
「あ、ハイ」
「いーなー!こんなキレーなオネーさんに応援してもらえるとか!」
「ふふ」
「あ、やっと笑った!」

にしし、と笑ってくれるこの子が可愛くて思わずファンになりそうだった。

「じゃあおれ、もーすぐ試合なんで!もし怪我してたら言ってください!おれ、」
「知ってます、烏野高校。日向くん、ですよね?」
「えっ!ハイ!あれ?!じゃあ、オネーさんもしかして...?」
「今日は、というか、いつも応援してます!」
「えーーーーーー!!!!!アザス!!!!!」

日向くんの元気さが気持ちよくて、わたしもみるみる気持ちが元気になっていくのがわかる。

「今日も、頑張ってください」
「ハイ!!!!!」

日向くんはこの時のこと、覚えてるかわからないけどあの時は烏野のプレーに元気付けられてる人間がいるよってことさえ知ってくれたらいいなぁと思っていた。

「影山クン、聞いてくれてもいいんだよ?」
「聞かねぇ」
「おれに...キレーなオネーさんのファンがいた!!!!!!!」
「あぁ?!集中しろ日向ボゲェ!」
「嫉妬ですか〜?おれだけファンがいて嫉妬ですか〜?」

そしてこんな会話が繰り広げられてるなんて、わたしは夢にも思っていなかった。

何年か越しにこのお手洗い事件を日向くんに話すと、記憶力はあまりいい方ではなかったようで。
そのあと会場で何度かわたしのことを探してくれていたようだが見つからなかったらしい。だが自信満々に「今日もおれのファンが見てる!」といつも客席を指さしていたそうで、それを飛雄くんはじめ烏野メンバーの方達はわたしのことを指していると思い込んでいたらしい。日向くんらしい、といえばそうなのだがわたしは自分が日向くんのファンだと思い込まれていた原因がわかり何年か越しに少しスッキリしてしまった。だって、今も昔も飛雄くんしか見てないのに...と当時は少し不満だったことも懐かしく思える。日向くんの名誉のためにもこの気持ちは黙っておこうと決めたのだった。




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