追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


差し入れ





「おーい、お前ら休憩いれんぞー」

烏養の声が体育館に響き、休憩になる。見計らったかのようなタイミングで武田が体育館に大きい段ボールを運び込んできた。

「先生、これ何?どしたの?」
「ゆ、有志の方から差し入れ頂いて」
「町内会のやつらか?」
「いや、東京からわざわざ送ってくださってるみたいなんです」
「東京からぁ?!」

そんな大人の会話を聞いてるのか聞いてないのか、田中、西谷、日向を筆頭にわらわらと人が集まり始めた。

「オイ、見ろ日向!」
「食いもんがいっぱい入ってるー!!!!」

激しい部活の休憩中にも関わらず全力で喜ぶ日向の姿に新入生たちはげっそりとしていた。

「日向ボゲェうっせーんだよ!いちいち食いもんで反応すんなボゲェ!」
「そんな影山くんも目がキラキラ輝いてるみたいですけどぉ?」
「日向、影山うるさい」
「じゃあ月島くんは1つもいらないってことですかぁー?!」
「そうは言ってないデショ」

わいわい騒ぎ出す生徒たちをよそに烏養は宅配の伝票にある電話番号を見つけ、電話をかけることにする。武田から谷地へと差し入れの段ボールは渡され、谷地から生徒たちへ順番に差し入れが配られる。
烏養は一体どんな人が送って来てくれたのか想像もつかないまま、体育館の外で電話をかける。

「もしもし?みょうじです」
「あっ、はじめまして。烏野高校バレー部コーチの烏養と申しますが、」
「えっ?!あ!か、からす!の」
「みょうじさん、ですか?あの差し入れで送って貰ったの今日届いたんすけど」
「あー!わたし、電話番号書いてました?!てっきり匿名で送れてるとばかり...すいませんわざわざお電話いただいて...」
「いや、こちらこそ東京からあんなにたくさん送って頂いてありがとうございます!生徒も今大喜びですげぇ助かってます。代表でお礼さすんで電話このまま繋いどいて貰っていいすか?」

烏養は体育館の生徒たちにお礼を言わそうと一歩、体育館に入ろうとするが電話口から「待ってください!」と聞こえ足を止める。

「はい?」
「あの、わたし烏野高校さんの春高バレーの試合で素敵な気持ちたくさん頂いて、ファンになりました!なんですけど、生徒さんたちにはわたしのことは言ってもらわなくて結構です。もちろんお礼も結構です!」
「いや、そういうわけには、」
「そ、それなら!また東京で試合してください。それが1番嬉しいですし、待ってます!」
「みょうじさん、あの!」

差し入れの量を見る限り結構な金額のはず、さすがにお礼も言わないまま電話を切るのは烏養の気持ちが収まらない。そう伝えようとすると、体育館からひょこっと影山が顔を出し「コーチこれ今食っていいすか?腹減りました」と飄々と話していた。

「お礼言ってから食えよ!」
「アザス!おい食っていいぞ、って日向俺より先に食ってんじゃねぇ!!!!!」

そんな影山の叫び声が聞こえ、電話を放置していたことを思い出して急いで謝罪する。

「すいません、お見苦しいところ」
「あ、あっ、い、今?!か、影山く...」
「名前も知ってもらってるんすね」
「ありがとうございます!!!!これからも烏野高校さん応援してます!!それでは!!」

急な彼女の熱量に烏養は驚きながらも「ありがとうございます。また東京で試合出来る様に全力で頑張ります」と答え電話を切る。面白い人だったな、と思いながら一連の流れを武田に伝える。

「もしかすると、影山くんのファン第一号さんかもしれませんね」
「そうだな。さ、お前ら休憩そろそろ終わんぞー!」

エネルギー補給をし、いっきに疲れが吹き飛んだ生徒たちは元気いっぱいに返事をしまた練習へと戻る。定期的に送られてくるようになった差し入れと、そのお礼の電話で烏養となまえは仲良くなりその後部外者でも公式戦は見れることを知ったなまえは仙台へと足を運ぶことになった。
そしてその姿を生徒たちが何となく、認識し始めるのはまだ少し先の話。
 




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -