「あー、こんばんは。今日は俺の順番らしいんで、やり方あんまわかんねーすけどよろしくお願いします」
男子バレーのSNSイベントで、毎日選手が交代でインスタライブをすることに決まったらしく今日は飛雄くんの順番らしい。わたしと飛空は邪魔にならないよう違う部屋で飛雄くんのインスタライブを見ていた。
昨日が宮さんだったこともあり、飛雄くんの不慣れな感じが可愛くてわたしもニコニコしながら見ている。
「コメント?読んだらいいんすかね」
画面と顔が近く、ほぼドアップの飛雄くんが面白くて声を殺して笑っている。飛空はずっと「パパだね〜」と飛雄くんに話しかけていて微笑ましかった。
「今1人ですか?違います。奥さんと仲良しですか?はい、仲良しです。2人目は女の子と男の子どっちですか?多分女です。飛空くん起きてますか?起きてると思います」
ファンの皆様はやはり飛雄くんのプライベートなことが気になるようで、淡々と答えていく飛雄くんの割に話の内容が可愛くて微笑ましかった。
「飛空くん見たいです!ってコメントが多いんで呼びます」
廊下を歩く飛雄くんの足音が聞こえ、見慣れた廊下が映る。え?こっち向かってる?扉を開けようとする飛雄くんに「待って!」と声をかけると自分のスマホから自分の声が聞こえて恥ずかしい。
「なんか奥さんが待ってて言ってるんで待ちます」
「パパのとこいく!」
「飛空くんだけね、ママは行かないの」
扉を少しだけ開けて、飛空だけ通らすと飛雄くんと目が合う。わたしの思いを珍しく察知してくれたのか片手で飛空を抱っこしながらリビングへ帰って行った。コメント欄に目をやると「奥さんの声聞こえた?」「飛空くん抱っこされてる〜」「可愛いい〜!天使!」など皆さん喜んでもらってるようで安心する。
「こんばんは!かげやまとあくんです!」
飛空の声が聞こえるとコメントの皆さんも飛空の挨拶を褒めてくれて、飛雄くんがそれを伝えると飛空はニコニコとご機嫌そうだった。
「パパのこと好きですか?だって」
「とあくんはパパのことだいすちです!」
「もうすぐお兄ちゃんになるね〜って」
「おにいちゃんになったらいっぱいちゅーする!」
「?」
これは、良くない。そう思ったが時既に遅しで飛空がにこにこで全世界へ発信してしまう。
「ママもパパもいっぱいちゅーしてるからとあくんもおにいちゃんになったらするの!」
コメントが早すぎて追えないが、大騒ぎなことは間違いない。わたしは寝室で恥ずかしすぎて布団に潜っていた。何も意味もないけど。
「おう、してやれ」
「うん!ママは?」
「ママは寝る部屋にいるだろ」
「マ〜マ〜!!!」
急にわたしが居ないことを思い出したのか、廊下をぱたぱたと走ってきてわたしが居る寝室のドアをトントンと叩き出した。
「飛空くんママ思い出して寂しくなっちゃったかな?そうみたいですね。あいつママ大好きなんで」
「影山選手も奥さんのこと大好きですもんね!はい、そっすね」
飛雄くん!律儀に全部答えないで!というわたしの気持ちは届くことなく飛空が部屋に戻ってくる。
「パパとおはなしした!」
「上手にご挨拶できて偉かったね」
そう飛空の頭を撫でながら褒めると嬉しそうに、きゃっきゃと笑っていて可愛い。ベッドに置きっぱなしのスマホから飛雄くんの声が聞こえてきて「パパおはなししてるー!」とまた2人でスマホを覗き込んだ。
「じゃあそろそろ終わります。お付き合いありがとうございました。明日は日向が担当なので、よろしくお願いします。おやすみなさい」
そう言ってライブは終わり、寝室に飛雄くんが入ってくる。
「お疲れ様」
「パパおしごとおわった?」
「おう、終わった」
飛雄くんが横に座り、当たり前のようにキスをしてきてわたしもそれを受け入れる。飛空が嬉しそうに「とあくんもー!」と強請ってくるので飛雄くんとわたしと両頬にキスをすると喜んでいた。影山家は今日も平和です。