「すいません」
この仕事をしていると、お客様の中には女性の他にもプレゼントで来店される男性客の人も多くて。声をかけられたので作業の手を止めお客様の元へ向かう。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「彼女に、プレゼントしたいんすけど」
「記念日ですか?」
「いや、普通に、プレゼントで...」
「素敵ですね〜!」
目の前のお客様は10代だろうか?若いのにプレゼントで彼女に花束なんて粋なこと思いつくな、彼女羨ましいな。そんなことを思いながら花束を作るためにヒアリングを続ける。
「彼女さんの好きな花とかわかります?色とか」
「花はわかんねぇすけど、青とか?水色とかの服よく着てます」
「なるほどなるほど。差し支えなければ、なんですが今回はプレゼントされる切っ掛けなどありますか?」
「きっかけ...」
「例えば、いつもありがとうとかこれからもよろしく、うーん...幸せを伝えたいとか、ですかね?」
「あ、じゃあ最後のがいいっす」
(青...幸せ...うん、これかな)
「こちらはデルフィニウム、と言って花言葉は"あなたは幸福をふりまく"という意味があって花束にするとこんなイメージですね」
持ってきた花と、花束のイメージ写真を見せて説明する。
「これにします」
「かしこまりました。メッセージカードなどはおつけしますか?」
「いや、直接渡すんでいらないっす」
「ではお作りしますので、そちらでお待ちいただけますか?」
花束を作りながら、会ったこともないお客様の彼女さんが喜ぶ姿を想像する。きっと、こんなに素敵なプレゼント喜んでくれるに違いない。
「お待たせ致しました」
「ありがとうございます」
花束をお客さんに渡すと、身長も高いし顔も綺麗なのでまるで少女漫画に出てくる男の子のようで見惚れてしまう。
「また、お待ちしております」
そしてその言葉は割とすぐ現実になり、それからほぼ毎月のペースでそのお客様はご来店されて色んな花束をプレゼント用に作成した。
薔薇の花束を依頼された時は絶対にプロポーズだとわかったので、お客様とああでもないこうでもないと相談しながら今までで1番良い仕事をした自信がある。そして後日、テレビでわたしが今まで接客していたお客様が男子バレー日本代表の影山飛雄選手であることを知り驚いた。