追っかけシリーズ番外編 | ナノ






影山選手の追っかけはじめました。


メイドの日





これはまだ、わたしが飛雄くんと付き合う前というか、ファンと選手の時のお話である。

「えええ、待って。莉緒ちゃんはさ、ほら若いし?いいと思うよ?」
「ダメ、絶対なまえちゃんとする」
「...ちょっと遠慮したい...なぁ、なんて」
「無理!もう買ったし、若利くんにもするって言っちゃったもん!絶対可愛いから!お願い!」

さっきから、わたしと莉緒ちゃんが何を言い争っているかと言うと、次のファン感で行われるイベントについてだった。次のイベントは選手がコスプレをするそうで、せっかくならわたし達もしようよ!と莉緒ちゃんから提案されてほぼ強制的に押し通されているところだった。

「...あんまりえっちなのはダメだよ?」
「やったー!!!!なまえちゃん大好き!!ありがとう!!いっぱい写真撮ろうね」

と、言ったのはいいものの実際会場で莉緒ちゃんから渡されたメイド服に着替えると胃が痛くて今すぐ帰りたい気持ちになってしまった。

「ねぇ...やっぱり...」
「無理!やめるとか無理!絶対可愛いから安心して出てきて!」
「可愛いというか...わたし年齢的に恥ずかしいんだけど...!」
「大丈夫!なまえちゃんの実年齢知ってる人会場にほとんどいないし、見た目年齢層なら優勝だから大丈夫!ほら早く出てきて!」

ドンドンとお手洗いの扉を叩かれわたしは渋々外に出る。莉緒ちゃんが用意してくれたメイド服は、黒のベーシックなものでスカートもボリュームがあってかなり可愛い。わたしの要望通り胸元はゆるくないもので助かったけど、スカート丈がいつもより短くて気にしてしまう。人生で初めて履いたニーハイソックスも恥ずかしいやらなんやらで、莉緒ちゃんの前に出るにも顔から火が出そうだった。

「...かっ、わい!え?!なまえちゃん、何?可愛いのもいけるわけ?!ずるくない?」
「莉緒ちゃんもめちゃくちゃ可愛いじゃん...!ていうか、えっちで目のやり場に困るよ...」
「そう?これで若利くん悩殺するんだ〜!はい、髪の毛やったげるね」

そう言ってわたしの髪の毛は「ツインテールだけはご勘弁を」というお願い虚しくあっさりとツインテールにされ莉緒ちゃんと記念写真を撮る。もうこれだけで良いんじゃないでしょうか?そう思うが莉緒ちゃんが許してくれるわけもなく、会場へと足を運んだ。

実際会場へ行ってみると、思っていたよりファンの方達もコスプレをしているようで自分たちだけが悪目立ちすることもなくほっと一息をつく。
そしてイベントがいざはじまると自分の服装のことより、目の前の影山くんのコスプレが格好良すぎて割とどうでもよくなってしまった。

「待って!!何?!え?格好良すぎない?影山くんアイドルにもなれるんでは...?!」 
「若利くんいかつすぎて無理...!ウケる何あれ」

影山くんは水兵さんのコスプレをしていて、黒髪に白い帽子がよく似合っていて、似合いすぎていて、格好良すぎてわたしは興奮して吐きそうだった。無理。一方牛島選手はどう見てもヤクザのコスプレで、隣で莉緒ちゃんがゲラゲラ笑って椅子からひっくり返りそうになっていた。後から聞いたけど、牛島選手はヤクザではなくスナイパーのコスプレだったそう。

影山くんと不意に目が合うと、いつも切長の綺麗な目がまんまるに見開かれて何に驚いてるんだろう?と一瞬悩んだが、すぐにわたしの服装だと言うことに気づいて顔が真っ赤になる。

「どうしよう!影山くん絶対引いてた...」
「んなわけないって!むしろなまえちゃんのその格好に悩殺されてるって!大丈夫!」
「えーーー、絶対今脳内でわたしの年齢計算してるよ〜〜〜〜!やっぱり今日このまま帰る」
「は?無理だよ?絶対連れてく」

そんな会話をしながら気づけば影山くんのところへ連行されていて、わたしが逃げる隙も与えられず影山くんと莉緒ちゃんと3ショットをマネージャーさんに撮ってもらう。そのまま2ショットも撮ってもらえたがもはや拷問だった。すぐに莉緒ちゃんと一緒に牛島選手の元へ向かおうとするが影山選手に阻止されることになる。

「どこ行くんですか」
「うっ、牛島選手のとこ、です」
「ダメです」
「えっ?!」
「早く帰ってください」

影山くんに一瞬何を言われたかが理解できず、黙って影山くんを見つめているとまた目を逸らされる。

「変な格好してきてすいません...」
「いや、ちげぇ。あ、その」
「影山選手、とってもお似合いですよ!格好良すぎて心臓止まるかと思いました!」
「心臓止まるのはこっちっすよ」
「え?」
「なまえさん、誰のためにそんな可愛い格好してるんすか」
「え、あ、影山選手の為、ですか?ね?」
「だったら俺以外に見せないでください」
「っ、そんなこと言われたら、勘違いしちゃう子いっぱいいるんでダメですよ!」

甘い空気に耐えられず、そう早口で捲し立ててその場を去り莉緒ちゃんの元へと駆け寄ると思いの外ドキドキしていたようでしばらく心臓の鼓動が早いまま収まらなかった。

と、言う話を思い出したのも飛雄くんがわたしの部屋でメイド服を見つけたからだった。

「着てください」
「やだ」
「お願いします。着てください」
「ちょっと、やだ!頭下げないで」
「俺もなまえさんの言うことなんでも聞くんでお願いします」
「えっ、じゃあ...って着ないよ!もう!」

飛雄くんからメイド服を奪い取り、元あった場所に返すがまだ諦めていないようで「何したら着てくれますか?」「こないだなまえさんあそこのケーキ食いたいって言ってましたよね?」「肩揉みましょうか?」とずっとまとわりついてくる。

「もーーーーー!わかった、わかったから!」
「着てくれるんすか!」
「とりあえず今日は着ないけど、今度ね」
「今度っていつですか」
「...あの服着た時より太ったから、また痩せたら着る!それでいい?」

飛雄くんの視線が痛い。本当は太ったなんて嘘でしかないが、今はこれで乗り切るしかない。

「どうせ着るなら完璧なコンディションで飛雄くんに見てもらいたいなぁって」
「...今日は我慢します」
「ありがとう」
「でも!」
「ん?」
「次着た時、そのままシていいすか?」

耳元でそう囁かれ「ダメに決まってるでしょ!バカ!」と飛雄くんを突っぱねると嬉しそうに笑っていて、その笑顔にわたしは悩殺されました。格好いいってずるい。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -