ひとめぼれ、 | ナノ

09


玄関でそのまま致してしまい、俺もなまえさんも終わった瞬間に酔いが覚めて2人でゲラゲラと笑い合った。

「何?思春期なん?わたしら」
「...俺が、悪かったです」
「ううん。わたしも会いたかったし、日向くんに抱いて欲しかったから嬉しい」

もう一度キスをして、なまえさんを抱き上げて風呂場へと連れて行く。一通り説明して、浴室を出ようとするとなまえさんに「1人にせんといて」と甘えられ俺は自分の欲求を抑えることが出来なかった。なまえさんが悪い。

やっとの思いで風呂から出て、2人でベッドに寝転んだ時にはもう朝になろうとしていた。

「なまえさん」
「んー?」
「明日休み?」
「うん、休みやで」
「明日は俺が朝ごはん、ってか昼?作るから勝手に帰らないでください」
「...ふふ、わかった」
「もっとくっついていいですか?」
「ん、ええよ。おいで」

そう言ってなまえさんが腕を広げて俺の頭をぎゅっと抱きしめてくれる。ブラジャーをつけていないのか、ダイレクトにおっぱいの感触が伝わり柔らかさで幸せな気持ちになる。うとうとしはじめて、そろそろ寝ようかと目を瞑ったタイミングでなまえさんの声が聞こえまた脳が覚醒する。

「今日さ、日向くんが他の女の子とおるって侑から聞いて」

その言葉で、そう言えば今日侑さんに飲みにいかん?と声をかけられ谷地さんのことを理由に断ったなと思い出す。

「自分勝手なんはわかってるんやけど、日向くんが他の女の子とおるって聞いて、嫌やってん」

がば、っとなまえさんのおっぱいから顔をあげると至近距離で目が合う。明け方の薄闇でもキラキラ光って見えるなまえさんの目が綺麗すぎて、目が眩みそうになる。なまえさんは優しく笑って、俺の鼻にキスをしてくる。未だになまえさんから言われたことを理解出来ずにぽかんと見つめていると「聞いてる?」と少し拗ねたように頬を優しく摘まれた。

「き、聞いてます!」
「言うたらあかんのはわかってるけど、寝言やと思って聞いて?」
「...話によっては無理です」
「もぉ。わがままやなぁ」
「なまえさんには言われたくないんですけど」

はは、と笑いながらそう伝えるとなまえさんの目が優しく伏せられて長いまつ毛に見惚れてしまう。柔らかい唇が俺のかさついた唇に合わせられ、その気持ちよさにまたふわふわと気持ちが浮つく。

「すき」

不意に耳に入った言葉は、俺のとぼけた脳を叩き起こすには刺激が強すぎた。脳どころか体も起こしてしまいベッドが大きく揺れてなまえさんが「わ、!」と驚く声が聞こえる。だけど、絶対俺の方が驚いてるから許して欲しい。

「い、いま!なんて、?!えっ、」
「なんか聞こえた?」
「聞こえた!!!!俺のこと!!!好きって!!!」
「ちょ、日向くん声、おっき」
「なまえさんの喘ぎ声の方がいつも大きいですよ」
「...もう寝よっかな」
「すいません。冗談です」

なまえさんがあくびをしながら起き上がり俺の太ももの上に乗り、首に手を回して鼻と鼻がくっつくほど近づいてくる。同じボディソープを使ってるはずなのに、なんでこんなになまえさんからは良い匂いがするんだろうと考える。

「すき、」
「俺も」
「ちゃんと言ってよ」
「ずっと逃げてたのなまえさんじゃん」
「...日向くん、好き」
「俺も大好きです」
「でも、」

なまえさんの表情が少し曇り、今から俺はまた振られるのだと感じる。いやだ、という気持ちのままなまえさんの唇を奪い舌を絡めて押し倒す。

「聞きたくない」
「ダメ、ちゃんと聞いて」
「嫌です」
「ん、っ...も、あかんって、ば」

嫌だ嫌だ嫌だ、聞きたくない。そんな気持ちでなまえさんの体にどんどん触れる。気持ちいい、もっと触りたい、触って欲しい。俺のことを、愛して欲しい。そんな気持ちに気づいて、手が止まり自分の頬を触ると涙で濡れていた。

「泣かんといてよ〜」
「な、かせないでくださいよ」
「よしよし」
「甘やかすか、っ冷たくするか、どっちかにして」
「かわいい」
「なまえさんの方が可愛い」
「日向くんの方が可愛いよ」
「...俺と、付き合ってください」

この歳になって、泣きながら告白するなんて情けないことになるとは夢にも思っていなかった。なまえさんは俺の涙を唇と舌で舐めとっていく。なまえさんの目は、俺のことを愛おしいと言っているのに正反対のことを言われて苦しくて苦しくて、また涙が溢れてくる。

「それは、できひん」
「な、んでですかっ」

抱きしめられているなまえさんを、今度は俺がきつく抱きしめて情けなく流れる涙をなまえさんの服が吸い取っていく。なまえさんは俺の頭を撫でながら数秒間沈黙して、観念したのかやっと話し始めた。