幸せ、とは。 | ナノ


▼ 07

侑にほぼ抱えられるようにして家に帰り、そのまま帰ろうとする侑を引き止める。

「俺、期待してまうけど?」
「...いいよ」
「っえ、は?なんて?」
「だから、いいよって言ったの」
「ほんま?!?!めっちゃ嬉しい!!!」
「ちょっと、うるさい」
「名前さ、前から思ってたけど俺に冷たすぎん?いや別にそういうとこも好きやからいいけど」
「多分侑には素、なんだよ。だから許して」
「全然許すで!」

ノリが軽いんだよなぁ、と笑みが溢れる。この侑の態度に何度も救われてきたなと思うとなんだか可笑しくなって本当に笑えてきた。自分の部屋に侑がいるのが変な感じで、やっと気持ちも落ち着いてきた。

「で、名前チャンはいつ俺のこと彼氏にしてくれるん?」
「...侑はさ、気づいてると思うけど」
「ん?」
「わたしめちゃくちゃ重いけど、いい?」
「はは、そんなことか!」

そう言ってゲラゲラ笑いながら侑はわたしの頭をこれでもか、というくらいぐちゃぐちゃに撫でてくる。「もう、やめてよ」と手を払おうとするとその腕を掴まれてぐっと抱き寄せられた。侑の鼓動が聴こえて、自分の体温が上がるのがわかる。

「あ、つむ...」
「なんや?」
「...待たなくて良いよ」
「まーたお前はそうやって逃げようと、」
「ちが、!違うの!」
「...もう振られるのはイヤやで」
「好き」

そう言って侑のシャツをぐっと掴むのが限界で、そのまま顔も見れず俯いてしまう。「ほんまお前ええ加減にえせよ」そう聞こえ焦って顔を上げると顔を真っ赤にしている侑と目が合う。

「ちょ、そんな、照れないで...よ」
「アカンて。お前、可愛すぎ」

侑がキスをしてこようと身を屈めたので顔の前を手で覆い阻止する。お預けを食らった侑は不満そうにわたしを見てくるが、その顔が可愛くてずっと一緒にいれたら良いなあと思ってしまう。

「まだ、侑から言われてない...んだけど」
「...アカン。ほんまに可愛い。名前、世界で1番お前が好きや!俺と付き合ってくれ!」
「はい、喜んで」

満面の笑みで喜ぶ侑に、なんだか悔しいのでわたしから飛びつくようにしてキスをすると目をまん丸にして驚いていた。してやったり、だなんて心の中で思っていると侑に伝わったのか悪戯を思いついたかのような表情でわたしをベッドへとどんどん追いやってくる。

「今日、泊まってもええか?」
「ダメ」
「なんでなん?!今そういう空気やん?!」
「さすがに酔いすぎてきもちわるい」
「アホか!」

気づいてないふりをしていたが、割と体力の限界でそのままお風呂も入らず、化粧も落とさずに寝落ちしてしまった。さすがに自分でもやってしまったなぁと反省はしているが、今日だけは許して欲しい。

翌日、目を覚ますと侑が赤ちゃんみたいに幸せそうな顔をしていてわたしまで幸せになる。ふと昨日から一度も見ていなかったスマホを見ると木兎からストーカーのような着信履歴と、赤葦から「死なないでください」とメッセージが入っていて「あ、わたし失恋したんだった」とやっと思い出した。

「侑、ありがとね」

頭を軽く撫で、シャワーを浴びに行く。長い長い、初恋だった。初恋は実らないってよく言うけど、それは本当だったし多分純粋に恋出来てたのは短くてあとは執着だったんだろうな。お疲れ様、わたし。でも木兎を好きになれて、ずっとずっと好きでいて、辛いことの方がもちろん多かったけど楽しかったよ。大好きだった、ありがとう。

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