幸せ、とは。 | ナノ


▼ 04

「お〜、起きたん?おはよ」
「、おはよ...」

朝とは言えない早朝に目が覚める。侑と目が合った瞬間「昨日はごめん」と2人の声が重なった。

「何で侑が謝んの?悪いのはわたしだよ」
「いや...抱いて欲しそうやったのに可哀想なことしたなぁって」

ニヤニヤしながらそう言ってくる侑が寝起きでもイケメンで悔しい気持ちになり、枕で攻撃をしておく。

「昨日は、酔ってたから覚えてない」
「シャワー浴びるか?」
「いい、家帰ってから浴びる。泊めてくれてありがとう」

甘ったるい空気に耐えきれず、荷物をまとめて逃げるようにして侑の家を出た。酔って覚えてないなんてとんでもない大嘘つきだなと自己嫌悪に陥る。

ほぼ始発で家に帰ったのでなんとか仕事も間に合い寝不足の体に鞭を打って働く。お昼休みにスマホを確認すると木兎から「今日の夜おにぎり食いに行こー!」とおにぎりのスタンプが送られてきて思わず笑顔になる。わざわざ3人のグループLINEではなく、わたし宛に送ってくると言うことは多分今日は2人の日なんだろうなぁと侑のことを思い出す。正直今朝のことで気まずかったので、今日は木兎と2人で気が軽くなる。

(あれ、わたし昨日あんな落ち込んでたのに元気だ...)

「こんばんは〜」

と、のれんを潜り侑の双子、治さんに挨拶して店に入る。

「おー、苗字さん。今日もありがとう」
「いえいえ、こちらこそ!治さんのおにぎり昼休みから楽しみにしてました」

にこにこと愛想よく話してくれる治さんを見ながら、侑の不機嫌そうな顔を思い出して双子でもこんなに違うもんなんだなとまた侑のことを考えていたことに気付く。

「今日はどれにしようかな〜!」

侑のことを考えていたことを自分の中でなかったことにし、おにぎりのメニューを決めることに徹底する。ガラガラ、と扉が開く音が聞こえ「遅い!」と文句の一言でも言ってやろうと振り向くと気まずそうに立っている侑がいた。

「よ!」
「...来れないって?」
「あー、ウン。代打の侑です〜!お隣よろしいですか?」
「どうぞ〜」
「そんなあからさまに萎えた顔すんなや!泣いてまうやろ!」
「泣きたいのはこっちだっつーの!」

酔いもあり思わず声が大きくなり、治さんに謝罪して侑にも謝る。

「ごめん、忘れて」
「いつになったらちゃんとすんの?」
「、は?」
「このままはよくないやろ。ちゃんと好きやって伝えたらあかんの?」
「それは、ダメ」
「なんで?振られるから?」
「おいツム、プライベートな話やろ。関係ないやつは黙っとけ」
「なあ、名前。俺って関係ないん?」

そう聞いてくる侑の顔があまりにも寂しそうで、ああわたしも木兎のこと話してる時ってこんな悲し顔してるんだろうなぁと冷静に思ってしまっていた。

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