幸せ、とは。 | ナノ


▼ 02

宮さんは、自分勝手な人だった。わたしがLINEの返事をしないと「既読無視?ひどない?」と泣いてるスタンプを送ってくるのに平気で2.3日既読無視をしたりする。幸いにもわたしは宮さんに好意を抱いていないので、痛くも痒くもないのだがLINEの通知が来るたびに「宮さんからかな」と思ってしまってる自分は随分毒されているなと感じた。

「ごめ〜ん!ちょっと遠征忙しくて連絡返されへんかった!名前ちゃん寂しかった?」
「いや、大丈夫です」
「そういう冷たいとこもええわぁ」

一体これは何の電話なんだろう。わたしは宮さんとそこまで仲良くなった記憶もないし、好かれるだなんてもってのほかだ。

なんだかよくわからないままたまに電話をする関係が続き、ついに2人で飲みに行くようにまでなってしまった。いや、本当は木兎と3人で会う予定だったのに「彼女が呼んでる!」と集合場所にすら来ず宮さんと2人きりにさせられてしまった。今日のためにこの服買ったのに...なんて女々しく思ってしまうのは許して欲しい。

ヤケ酒、と言われればそれまでだかいつもよりかなりハイペースでお酒を飲んでしまった。

「名前ちゃん飲み過ぎちゃう?」
「いいんれす。飲みたい気分なので」
「ぼっくんに振られたから?」
「振られるどころか木兎はわたしが好きなことすら気づいてないですよ」

自嘲気味にそう呟き、グラスを置くと「ハイお水も飲みや〜」と水のグラスを渡されて渋々お水を飲む。

「ほんなら俺と付き合わへん?」
「付き合いません」
「なんでなん?俺イケメンやし身長高いし、ぼっくんと収入はおんなじくらいやけど〜あのアホより女心はわかってるつもりやで?」
「...だって、宮さんわたしのこと好きじゃないでしょ?」
「ん?」
「わたしが宮さんのこと興味ないから、わたしに興味持ってるだけですよ」

ふぅ、とため息を吐きながら最近思っていたことを宮さんにやっと伝えれて安堵する。こういう人はきっと追っかけるのが好きで、わたしがその気になった途端手のひら返してどこかまた違うところへ行く。そう決まってる。

「え〜!そんなことおもてたん?」
「ハイ」
「でも今名前ちゃん俺のこと興味あるやろ?」
「...」
「最初の頃よりLINEも返してくれるし、前やったらきっとこうやって2人になったら帰ってたやん?」
「...まあ、宮さんといると普通に楽しいですし」
「せやろ?ほんなら付き合お!」
「いや、それとこれとは」
「ぼっくんに彼女おらんくなったら別れてもええよ」
「...っ」
「なんなら別に別れんでも、ぼっくんに彼女おらんくなって付き合えるってなったら俺とは別れたらええし」
「な、なんなんですか?」
「だから言うてるやん。俺は名前ちゃんのこと好きやって」

免疫が無さすぎて顔がいっきに赤くなるのがわかる。お酒のせい、そう思いたい。目の前の宮さんはニヤニヤしながらお酒を一口飲んでいて正直それだけで様になるからずるい。

「そんなの、初めて聞きました」
「うん、今初めて言うたもん」

宮さんがテーブルから身を乗り出して、わたしの髪の毛を耳にかける。その一連の流れがスマートすぎて心臓が飛び出しそうなくらい脈打つのがわかる。耳たぶをするっと撫でられ、身を捩ると嬉しそうに宮さんが微笑む。そんな目で見られると、本気だって勘違いするから辞めて欲しい。おでこをこつんと当てられ、鼻がぶつかる。するならいっそ一思いにしてくれ!これはキスをするよりよっぽど恥ずかしい。目をぎゅっと閉じると唇を重ねられ「好きやで」と囁かれもう一度目が合い、キスされる。

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