小説 | ナノ


▼ ぽん様

「友人ちゃん、おめでとう!」

そう言って子供達が友人ちゃんにミニブーケを渡す。友人ちゃんは、それはそれはとても綺麗で。わたしは思わず涙が出そうになるが、ぐっと堪えて「おめでとう」と声をかけた。

「みんなありがとう!飛空も飛茉も正装めっちゃ可愛いじゃん」
「友人ちゃんとっても綺麗!」
「おひめしゃまみたい」
「え〜!?ほんと?ありがとう」

友人ちゃんは満面の笑みでそう答え、白いドレスを輝かせていた。そう、今日は友人ちゃんと牛島さんの結婚式で。わたし達は家族全員で参列させてもらっていた。

「ママも、おひめさまちた?」

お行儀よく椅子に座っている飛茉にそう尋ねられ、返事をしようとする前に横から飛雄くんが会話に割り込んでくる。

「してたぞ。すげぇ綺麗だった」
「飛空くんもママと結婚式する!」
「名前さんは俺のだから無理だぞ」
「パパ意地悪しないで!」
「ちょっと、2人とも声大きいよ」
「しー!」

男チームが盛り上がる中、テーブルにはわたし達家族しかいないと言えど静かに!と飛茉がポーズをとる。飛茉は少し恥ずかしそうにわたしの耳元で「ひぃも、しょーちゃんとおひめさまする」と言ってくるので飛雄くんに聞かれていないかヒヤッとしたがどうやら食事に夢中で気付いていないようだった。

「今日は、家族全員で来てくれてありがとう」
「影山、ありがとう」
「っす。おめでとうございます」
「友人ちゃんとっても素敵な式だった!」
「わたしも名前ちゃんの式参列したかったなぁ」
「…その節は…」

痛いところを突かれ笑っていると飛雄くんが良いことを思いついたと言わんばかりに「じゃあ」と話を切り出してくる。正直に言うけど、わたしはもうこの後言おうとしてきたことがわかっているし、答えはノーだ。

「もう一回しよう」
「しません。じゃあ、友人ちゃん今日は本当におめでとう」
「ふふ、相変わらず見せつけてくるね〜」
「確かに式を一度だけ、という決まりはないな。俺たちも毎年するのはどうだ」
「まだこの後二次会も残ってんのに、なんで来年の話ししてんの」

ははは、と友人ちゃんは牛島さんのことを笑い飛ばし肩をばしばしと叩いていた。この風景がなんだか懐かしくて、感傷的になってしまう。ここまで来るのに、この2人がどれだけ遠回りをしたか思い出すだけでも頭が痛い。そして、無事に今日2人が結婚式を挙げれて本当によかった。と友人ちゃんと握手しながら思うのだった。

「でさ、若利くんにバレちゃって」
「え?」
「ピル飲んでるの、バレた」
「言ってなかったの!?」
「…言ってなかった」
「え、でも友人ちゃんも子供は、?」
「欲しいけどタイミング無視で出来そうだったからわたしの方で調整しようと思ってて」
「まあ、その辺は友人ちゃんプロだもんね」

結婚式も終わり、まだ一ヶ月も経っていない頃に友人ちゃんから「助けて」と連絡が来て電話をするとそこからマシンガントークが始まった。

「名前ちゃんとこは?1人目いつとか計画したの?」
「…ウチはさぁ、ほら…」

毎晩してたら出来ました、なんて恥ずかしくて友達には言えないなと言葉を濁す。

「わ、わたしの方が歳結構上だったからすぐにでもって話になって」
「へぇ」
「何よ、その反応」
「別に〜?毎日ヤってたら出来たんだろうなぁ、って」
「ちょっと!」
「だってさ、だめ、思い出したら笑えてきた」

友人ちゃんが今思い出してることは、多分わたしも同じことを思い出していて。お願いだから忘れて欲しいと当時思っていたが、やっぱり何年経っても忘れてくれそうにないなとため息が出る。

「あの影山くんがめちゃくちゃ真面目な顔で「いつからセックスしていいんですか」って検診で聞くとかさ、もう、ほんと…無理なんだけど」

友人ちゃんはそう言い切ると電話越しに大声でゲラゲラと笑い出し、とうとうわたしまで釣られてしまい2人でひとしきり笑い続けた。

「なんか笑ってたら若利くんと喧嘩してんのバカらしく思えてきたからさくっと仲直りしてくるわ」
「ふふ、そうして?」
「あと影山家見習ってうちらも毎日する?って仲直りに提案してみる!」
「ちょ、っと!待って!今は違うから!子供たちいるし!」
「でもどうせ月1はしてんでしょ?」
「…」

それより、かなり多い、とは言えず思わず言葉を濁してしまう。「そうだよ」と言ってしまえばよかったが人間とは咄嗟に嘘がつけない生き物なんだなと1人で感心してしまう。

「その反応ってことは、もっとしてるんだ〜?へぇ〜?」
「やめてよ!高校生じゃあるまいし」
「3人目もたのしみだなぁ〜」
「いやいや、もう体力的に限界だよ」
「ま、案外飛空たち大っきくなってから急に出来たりしてね」

まさか本当に、その通りになるとはこの時は2人とも夢にも思っていなかったしわたしだってもう何年も出来なかったのに急に授かるものなんだ。と、驚くことになる。



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