小説 | ナノ


▼ コッコ丸様

「いらっちゃいませ!」
「いらっしゃいませ〜!」

そう言って、飛空と飛茉はニコニコしながら暖簾をくぐって入ってきた大人たちへと挨拶をする。

「あー!ほんまにおるやん!可愛ええなぁ!!」
「飛茉!飛空!遊びに来たぞ!」

侑、木兎の順番で店内へと入ってくる。今回はバレーボール協会の関係ではなく、おにぎり宮の店主宮治からのお願いで影山家の子供達が駆り出されていた。

「2人とも熱いから気ぃつけや」
「はい!」

治とおそろいのTシャツと帽子を着用して飛茉と飛空は笑顔で店内をうろうろと歩いたり、食事に来た選手と話を楽しんでいた。SNSでの宣伝に、子供たちに遊びに来て欲しいと先日治から直々にお願いがあり飛雄の遠征に合わせてお邪魔することになった。

「おいち?」
「おお!美味いぞ!」
「飛空くん、そっちのちっちゃいの作ったよ!」
「ほんなら俺それから食べよかな〜!」
「つむつむ、おいち?」
「美味い!いつも美味いけど、今日は特別美味い!」

子供たちは笑顔でおにぎりを食べていく木兎と侑ににこにこと笑顔を振りまき、ご機嫌の様子だった。普段は人見知りの飛茉も、いつもと違うまるでおままごとの延長のような遊びに楽しいが勝っているようで初対面の人にも積極的に「おいち?」と聞いて回っていた。

「あ!臣くんだ!」

佐久早が店内に入った瞬間、飛空が佐久早の足元に走って近寄り満面の笑みで握手を求める。

「臣くん、いらっしゃいませ!」
「…こんにちは」
「オミオミ〜!こっちの席取っといたぞ!」
「俺は1人で食べる」
「そんなん言わんと、臣くんもこっち来ぃや」
「おみくん、おともだち、ないの?」

飛茉が心配そうに佐久早へと話しかける。その言葉に侑と木兎は涙が出るほど笑っており、これ以上絡まれる前にと佐久早は飛茉の頭をぽんぽんと軽く叩いて木兎が指していた席へと着席する。

「ご注文は!何にしますか!」
「…梅」
「はい!ひぃちゃん、治さんに梅ぼし1つって言える?」
「うん!いえる!」

2人は手を繋ぎながら店主である治の元へ向かい「せーの」と声を揃える。

「「うめぼしひとつです!」」
「はい、りょーかい!よぉオーダー取れたなあ!偉いで2人とも」

わしゃわしゃと2人の頭を撫で、手を洗い治がおにぎりを握っていく。その姿を2人はまるでお気に入りのおもちゃで遊んでいる時のようなキラキラした顔で見つめていた。

「すごぉい!おにぎりできた!」
「治さんすごいね!」
「あちちなのに、しゅごい!」
「へへ、せやろ?すごいやろ〜!」

治は2人から尊敬の眼差しを受け取り笑顔で子供たちにピースサインを見せる。佐久早におにぎりを提供した後、慌ただしく店内に駆け込んできた人物が2人。そして、その2人に子供たちのテンションが一瞬で最高潮まで上がる。

「しょーちゃん!」
「パパ!」

2人の声が揃うが、飛雄は飛茉が先に日向の名前を読んだことにむ、っと顔を顰め日向が抱き上げる前に飛茉を抱き上げた。そして、飛空も拾い上げ、日向にドヤ顔を見せつける。

「おい!飛茉は今俺の方に来てただろ!」
「あ?2人とも俺の方に来てた」
「パパ!しょーちゃん!けんか、めっ!」

飛茉がそう言って飛雄の頬をぎゅっと摘んでみせると、飛雄も仕返しだと言わんばかりに手が塞がっていたため飛茉の頬を甘噛みする。

「パパにたべらりた!」
「飛空くんもたべる〜!」

がおー!と言いながら、飛空が飛茉のほっぺにかぶりつき、なんとも平和な時間が過ぎる。その様子を治はしっかりとスマホに収めあとで名前に送ってやろうと企んでいた。

「名前さんは?」

飛雄が飛空に尋ねると治が代わりに「名前さんなら裏いてもらってるで」と返事をする。「アザス」と返事をし、子供たちを日向からさっきは奪い取ったくせに今度は預け、ずんずんと裏口へと進んでいく。

「名前さん」
「あ、飛雄くん!お疲れ様」

子供たちの様子を裏から微笑ましく見ていた名前は、いきなり飛雄が姿を見せて驚いていた。いつものように名前を抱き寄せ、頬を寄せ合う。その姿は店内からは丸見えで謎の歓声が上がり、名前は見られていることに気付き飛雄から離れようとするが力で敵うわけもなく諦めていた。

「しょーちゃん、ひぃねおかかたべたぁい」
「えー!じゃあ今日はおかか半分こするか!」
「治さん、おかか1つです!」

子供たちは、マイペースにオーダーを取り治に伝える。その子供たちの様子で、普段から両親のこういった姿に慣れているんだろうなとその場の全員が悟ったらしい。

後日、SNSに掲載されたキッズ店員達の動画は拡散が止まることなくおにぎり宮のフォロワーは思っていたより増えたそうで、治は大喜びだったとか。



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