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▼ みき様

最近飛雄くんの様子がおかしい。外に出る時は絶対ツバの広い帽子を被れと言ってくるし、食事中にいきなりサングラスをかけさせたりしてくる。一昨日だって、公園で急に抱きしめられてしばらくそのまま何を言っても離してくれなくて。急に離されたと思ったらまたサングラスをかけられ、飛雄くんの後ろに立たされていた。

もしかして、と一つだけ心当たりがあるがまさか、そんなという気持ちもあり飛雄くんには恥ずかしくて確認が出来ていない。だって、違っていたら恥ずかしくて耐えられない。

「名前さん、今日から買い物は俺帰りに寄ってくる」
「いいよ。練習で疲れてるでしょ?」
「いや、いい。行く」
「とりあえず今日は何も買ってこなくていいよ」

そんな会話を朝すると、突然飛雄くんが飛空に話しかけ出した。

「飛空。俺がいない間ママを守れるのはお前だけだぞ」
「わかった!とあくんママ、まもる!」
「今日は公園行かずに家の庭で遊べ。わかったか?」
「うん!おにわでプールちていい?」
「いいぞ」
「やったー!ママ!パパいいよだって!」
「よかったねぇ。飛空、プール好きだもんね」
「うん!だいすき」
「頼んだぞ」

そう言って、飛雄くんは飛空の頭を撫でてわたしの腕の中で寝ている飛茉を愛おしそうに見る。そして、わたしにキスをして練習へと向かった。

お昼ご飯を飛空に食べさせ、飛茉の授乳も終え、飛空念願のプールの準備をする。

「飛空、はだかんぼで入る?水着着る?」
「きょうりゅうさんきる!」
「はぁい」

飛空のお気に入りの恐竜水着に着替え、子供用のプールで飛空が水遊びを始める。飛茉は昼間ぐっすり寝ていることが多くわたしは束の間の飛空との時間を楽しんだ。

「ママみて!」
「なになに?」
「パパのまね!」

そう言って飛空はプールに浮かんでいるボールでわたしにファンサービスをしたり、飛雄くんのトスの真似をしたりと2人でおおはしゃぎだった。何をしていても可愛い我が子に、目がハートになりながらスマホで写真と動画をひたすら撮影していた。

「パパそろそろ帰ってくるからお片付けしよっか」
「やだぁ」
「えー?もういっぱい遊んだのに?」
「とあくんまだプールしゅる」

途中から飛茉も起きてきてハイハイしながら飛空が作った水溜りで遊んでいたが、それが楽しかったのか珍しく飛空がイヤイヤとぐずり出す。

「パパ帰ってきてご飯出来てなかったら可哀想だなあ」
「や!とあくんプールちてるから、ママあっち行って!」
「そんな寂しいこと言うの?ママ悲しい」

しくしく、と泣き真似をしていると飛空がプールから出てきてわたしの足にぎゅっとしがみつく。

「えんえんしないで」
「飛空がママにあっち行けって言ったから悲しいよ〜」
「…ごめんね」
「じゃあお片付けしてくれる?」
「明日もプールちていい?」
「じゃあ続きはまた明日ね」
「うん!」

その後は飛茉はもう一度遊び疲れたのか寝てしまい、飛空もプールではしゃいで疲れたのか飛雄くんが帰ってくるまで熟睡してくれていた。

「飛空と飛茉、そろそろ起こすか?」
「うん、ご飯食べてくれないと困るしね」
「わかった」

帰ってきた飛雄くんが子供達を起こそうとするが、すぐにキッチンへ引き返してきて後ろからぎゅっと抱きしめてくる。

「甘えたさんなの?」
「ちょっとな」
「何か嫌なことあった?」
「…」

こういう時の飛雄くんは、きっと脳内でいろんなことを考えているんだろうなぁと昔から飛雄くんの言葉を待つのは嫌いじゃなかった。後ろから抱きしめてくる飛雄くんの腕を、ぎゅっと握ると飛雄くんの唇がわたしの耳に触れる。

「実は最近、名前さん結構撮られてて」
「え!」
「マネージャーが色々動いてくれてるけど、来週もしかしたら出回るかもしんねぇ」
「やっぱり?最近飛雄くんガード硬くなったなぁって」
「嫌」
「ん?」
「名前さんの写真出回ったら困る」
「わたしはもう仕方ない、って思ってるから気にしなくていいよ」
「俺が嫌。んなの、ぜってぇみんな名前さんに惚れんだろ」
「や、やだ!それ外で言ってないよね!?」

あまりの恥ずかしさに思わずそう言うと飛雄くんは変わらずきょとんとした様子で「マネージャーにはそう言ってるけど」と言ってくる。お願いだから100歩譲って、そういうことを言うのはわたしの前だけにして欲しいと切に願った。

その後も、定期的に訪れるパパラッチの影と、飛雄くんの戦いは終わることはなく。時には見せつけるようにわざわざ外でキスをしてきたり、急に上着を被せられたりと色々驚くこともたくさんあった。まあ、これはこれで飛雄くんに愛されている証拠だと、自分に言い聞かせて日々を過ごすことに徹したのだった。



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