小説 | ナノ


▼ ham様

ことの発端は、飛茉が飛雄くんにとびきり甘えた声で「ひぃね...じゃかしゅけにあいたいの」とおねだりしたことだった。おねだりを真横で聞いていたわたしは飛雄くんが断るものだと思い込んでいて「わかった」と返事をしていて驚いた。

そこからの行動は早くて、日向くんに連絡を取り東京でのファン感のチケットをわたし達3人分抑えてくれたとのことだった。

「わたし、飛茉にダメって言うかと思ってた」
「ジャカ助に会いたいなら、いい」
「えっ、、、?」
「え?」
「ううん。なんでもないです」

これ以上は掘り返さない方がお互いのためかもしれないと自分を言い聞かせ、眠りにつく。

せっかくなら、とジャカ助の公式で販売されている子供用のなりきりグッズを取り寄せ飛空と飛茉それぞれに着せることにした。家で軽く着せただけでも可愛くて、思わずスマホで写真を撮りまくる。あれ、もしかしてうちの子供ってめちゃくちゃ可愛いのでは?と親バカ炸裂しながら当日を迎える。

「やったー!!じゃかしゅけ、いる?」
「いるよ〜!」
「飛空くんも!ジャカ助とお写真撮る!」
「ぱしゃする!」
「しようね〜!」

会場に入ると、ざわざわとファンの方がこちらに気づいてるのがわかり申し訳ない気持ちでいっぱいになる。飛雄くんの名前もチラホラ聞こえてきていた。ジャッカルは拠点が大阪だけど、東京での試合は多いしアドラーズとかけもちで応援してるファンの方も多いようだった。何組かお話ししたことあるファンの方も見かけ、目が合うのでそっと会釈だけしておく。わかるよ、かけもちしてる先で会うの気まずいよね。うん、わかる。

そんな気持ちも子供達には関係なく大はしゃぎでファン感を楽しんでいるようだった。

「しょーちゃん!でてきたぁ!」
「おみくんもいる!」
「みんなお手手振ってるよ?」

そう声をかけると名前を呼びながら手を振りかえしていて、日向くんがこちらに気づく。

「飛空ー!飛茉ー!」

そうマイクを通して呼ばれてしまい、会場の視線が一瞬にしてこちらに集まるのがわかる。きっと今ので会場の全員がわたしたちに気づいてしまっただろうし日向くんは侑さんに怒られていた。

「こら!プライバシーがあるやろ!」
「す、すいません...!」
「あー!ほんとだ!!!あそこにいる!!おーい!!!」
「ぼっくんも!やめぇ!」
「ツムツムみて!ジャカ助の服着てる!」
「...ほんまや」

次々に話しかけてもらって飛空と飛茉は大興奮でジャッカルの人たちに手を振り続けていた。わたしは周りにぺこぺこと頭を下げて子供達に「翔ちゃん達お仕事中だから、バイバイしてね」と声をかけて大人しく座ってもらうことに成功する。

そのあとも子供達は大喜びでファン感を楽しんでいて、たまに飛んでくる日向くんのファンサに飛茉は目をハートにして喜んでいた。ファンサをもらって喜んでいる飛茉の姿と自分の姿がだぶってしまい、少し恥ずかしくなるが娘が喜んでいるのでよしとする。

日向くん達がステージから下がり、無人のステージを見ながら子供達が興奮気味に話だす。

「しょーちゃん、ひぃのことみてた!」
「うん、見てたねぇ」
「飛空くんも!翔ちゃんに手振ってもらった!」
「あ!じゃかしゅけ、こっちみた!」

ぴょんぴょこ跳ねながら手を振っていると、触れ合いタイムなのかジャカ助が席の方まで来てくれて子供達のテンションは最高潮に上がっていた。

「ママ!ちゃちん!ぱしゃ!する!」
「ひぃちゃんよかったね!」
「うん。うれしー」

ジャカ助にハグをしながらニコニコ喜んでいるミニジャカ助の飛茉はそれはそれは、親バカで申し訳ないけど可愛かった。わたしは「可愛い…」と思わず声を漏らしながら撮影をしているとジャカ助に呼ばれ飛空も一緒に混ざる。飛茉、ジャカ助、飛空の順番でミニジャカ助とジャカ助のスリーショットをスマホで撮影する。

「か、可愛い…!」
「あの」
「はい!?」
「もしよかったら、お母さんも一緒に撮りましょうか?」
「ママおいで!」
「え、いいんですか…?」
「はい!あの、えっと…」
「?」
「ご迷惑でなければ、後でお子さん達と撮らせてもらっても…?」
「あ!はい、大丈夫ですよ」

日向くんのユニフォームを着た女性が声をかけてくれて、飛茉を抱き上げて3人で撮影してもらう。お礼を言ってスマホを返してもらい、今度は子供達とその女性達を撮影しようとするが「お母さんもよければ…!」と声をかけられジャカ助が埋もれてしまいそうな人数で写真を撮ることになった。

「ありがとうございます!」
「こちらこそありがとうございました」
「おねーたん、ちゃちんとってくれて、ありあと」
「ありがとうございました!」

子供達がニコニコとお礼を伝えると、その女性も嬉しそうにしてくれて微笑ましい気持ちで胸がいっぱいになる。

その後選手達がまたステージに戻ってきて、いの一番にドヤ顔で日向くん列の先頭を陣取る娘が面白くて日向くんと目を合わせて笑ってしまった。

「飛茉〜!!!」
「しょーちゃん!みて!ひぃ、かわい?」
「可愛い!まじで、すげー!可愛い!」
「えへへ」
「食べちゃいそう!!!!!」
「やー!」
「飛空も似合ってるぞ〜!!ジャカ助よりかっこいいな!」
「へへん!ママがしてくれた!」
「名前さんも遊びに来てくれて、ありがとうございます」
「こちらこそ良い席招待してもらっちゃって…!」
「これを機にキッズスペースがあった方がいいんじゃないか、って広報の人が!」
「とっても見やすくて、子供達も嬉しそうだったよ〜」

お礼をもう一度伝え、日向くんと飛茉のツーショット、わたしと飛空も入って4ショットを撮ってもらい会場を後にする。大満足の子供達は車の中で寝てしまい、どうやって家の中まで運ぼうかなと頭を悩ませながら帰路に着く。

「しょ、ちゃん…じゃ、かしゅけ…」

とチャイルドシートの上で寝ぼけながら幸せそうに呟く飛茉が可愛くて、連れてきてあげれてよかったなと思うのだった。家に帰ってから、スマホを見るとSNSがそれはそれは大騒ぎで申し訳ない気持ちと確かにうちの子可愛かったもんな、と思ってしまうわたしがいた。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -