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▼ ゲリラ豪雨

突然のゲリラ豪雨に、せっかくデートのために巻いてきた髪の毛も死んでしまって最悪の気分だった。行きたかったカフェも「それちゃうやん」って地図見間違えてて結局辿り着けずに治に怒られるし最悪。

豪雨の中走ってなんとか辿り着いた公園の屋根下で無言で雨を見続ける。

「凄い雨やな」
「...うん」
「何でそんなテンション低いねん」
「だって...せっかく久しぶりにデートやのに良いことなんもないもん」

ため息を吐きながら治を見ると、水も滴る良い男とはこういうことを言うのか。と惚れ惚れするほどの色気に当てられて目が眩みそうだった。あ、と気づいた時には治にキスされていて「機嫌直った?」と悪戯っぽく笑いかけられる。

「今直った」
「ほんま可愛いな、お前」
「子供っぽいって言いたいんやろ?」
「それも含めて可愛い、って言うてんねん」
「アホ」

誰もいない公園で、良い大人がびしょぬれでキスしてるところはドラマか少女漫画か。現実は蒸し暑いし、雨の音は凄まじいし雷の音もする。良いことなんて何一つないけど治が隣にいる、それだけでドラマとか少女漫画より良いものになる。

「んで、名前さん」
「何?」
「その格好、目に毒なんでこれ着てくれません?」
「、は?えっ、あ...!」
「濡れてるから気持ち悪いかもせんけど」

治にトントン、と叩かれた胸元を見ると「デートには勝負下着や!」と友人に唆されてしっかり身につけてきた勝負下着がくっきり浮かんでいる。

「お、」
「おん?」
「治に見せるために、してきたから...ええねん」

後半は恥ずかしすぎて小声になりすぎて治に聞こえたかはわからない。それでもびしょぬれのまま抱きしめられて激しいキスが降ってきて「聞こえたかな?」なんて呑気に考えてしまう。

激しくなっていくキスと反比例に、雨は収まり曇天が広がる。

治から与えられる甘い愛に酔っていると、ふいにキスが止み物足りなくて思わず治を見つめてしまう。

「そんなエロい顔でこっち見んな」
「み、見てへん...!」
「こっから1番近いホテルまで走れるか?」
「ホテル?!」
「いっつも俺の部屋でしてたからたまにはええやろ」

返事の代わりに治のことを見つめて、こくんと頷く。

「名前もえらい乗り気みたいやし?据え膳食わぬはなんとかかんとかや」
「そんなんちゃう!」
「俺に見せてくれるんやろ?」
「それは、そうやけど...」
「ほんなら走るからこれ着とき」

治の羽織っていたシャツを強引に着せられ、そのまま腕を引かれて小雨の公園をバシャバシャと足元を濡らしながら駆け抜ける。童心に帰るようだけど、今からどこへ向かうかを考えるだけで体の中が熱くなる。

雲の切れ間から太陽の光が見え、足元の水たまりがキラキラ光って、治の濡れた髪もキラキラ光っている。こんなに走って向かう先がラブホテルなんて大人になってしまったなと笑いが込み上げてくる。笑ってるわたしに気づいたのか「何笑ってんねん、アホ」と治も笑い出して、やっぱり治のことが好きだと思うのだった。



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