小説 | ナノ


▼ り。様

「こんにちは!よろしくお願いします!」
「しょーちゃん!だっこ!」
「飛茉、ちゃんとご挨拶して!」
「こんにちは。おねがいちます」
「適当にしてくれて良いから」

飛空と飛茉は母に言われた通りしっかりと自分の脱いだ靴を揃えて「おじゃまします」と孤爪家に入っていく。

今日、両親達は結婚記念日でデートをするらしく夕方から孤爪家に預けられることになった。見慣れない部屋できょろきょろしている子供達に日向が遊ぼうと声をかける。

「研磨はまだお仕事中だから俺と遊ぼうな!」
「やったー!」
「ひぃも!あそぶ!」

家主の研磨はどうしても外せない生配信の仕事が後1本残ってるそうで、子供達と日向は庭先で遊ぶことにした。子供用のボールを投げて3人できゃっきゃとはしゃいでいると、仕事が終わったのか研磨が覗きに来る。

「お菓子、あるけど」
「おかし!たべる!」

飛茉がキラキラとした目線を研磨に向けると、研磨はさっと目を逸らし「手、洗ってから来なよ」と部屋に戻っていく。

「こじゅけんおこってる?」
「怒ってないよ!研磨は少し恥ずかしがり屋さんなの!飛茉と一緒」
「飛空くんたちね、いっぱいこづけんの動画みたの!」
「そっか〜!あとで研磨に言ってやろうな」

飛空の頭を撫でてやり、飛茉を抱き上げ飛空と手を繋ぎながら汗をかいたので風呂場へ向かう。シャワーを浴び終わり着替えを終えると研磨がお菓子と飲み物を用意して待ってくれていた。

「ぷりんだ!」
「これママのプリン?」
「そう!研磨も食う?」
「...食べる」

4人でいただきまーす!と手を合わせてもぐもぐ食べているとまたしても飛茉が興味深そうに研磨を見つめている。

「何?」
「こじゅけん、ぷりんすき?」
「嫌いじゃない。その呼び方辞めてくれない?」
「?」
「研磨」
「けんま!」
「そう、良くできました」

ふわ、と微笑む研磨を見て日向は自分の心がほかほかと暖かくなるのがわかった。飛空も自分の妹と研磨が仲良く話してるのが嬉しいようでにこにこと見つめていた。

「研磨〜!きたぞ〜!」

と、玄関から大きい声が聞こえて飛茉の肩がビクッと揺れる。研磨は面倒くさそうに立ち上がり、声の主を迎えに行こうとするがその人物が部屋に入ってくる方が先だった。

「よ!チビちゃんず!」
「俺もですか?!」
「悪ぃ、悪ぃ」
「こぁいひとだ!」
「こら!ひぃちゃん!」

飛空が焦って飛茉の口を閉じようとするが間に合わず、飛茉の言葉に男達3人はぽかんとした後ゲラゲラと大声で笑い出した。

「っ、クロ...!怖い人って...!」
「うるっせぇ...!」
「飛茉!人にそんなこと言ったら、っ...!あははっ」
「みんなにこにこだねぇ」
「ひぃちゃんごめんなさいしないと!クローさん怖くないでしょ!」

飛茉が黒尾の元まで歩くと、黒尾がその場でしゃがむが「ごめんね?」と可愛くこてんと首を傾げる飛茉に悩殺され動けなくなっていた。

「あっ、俺この子連れて帰って育てて良い?」
「ダメに決まってるでしょ」
「ひぃクロじゃなくて翔ちゃんがいいもん」
「このツンデレ、クセになるわ」
「黒尾さん......」
「いや!?日向、その目やめて?!」
「飛茉ちゃんこっちおいで、このお兄さん危ないから」

研磨がそう呼ぶと飛茉は憧れの研磨に呼ばれたことが嬉しかったのかにこにこ笑顔で研磨に抱かれて飛空の横にすとんと座らされていた。

その後はしゃいだ2人はお昼寝、と言うには少し遅い時間だが眠ってしまいその様子を日向はスマホで子供達の両親に送っておく。寝てる間に3人は今後の配信の打ち合わせなどをして時間を過ごしていた。

そして時間が過ぎ、お腹が空いたのか起きた飛茉がぐずりながら飛空を起こしていた。飛空の隣には日々の激務で疲れているのか黒尾が大きな口を開けて爆睡していた。飛茉は黒尾のいびきに怖がりながらも兄の体を揺さぶる。

「にぃに、おきて」
「ん〜」
「ママどこ?パパは?」

しくしく泣きながら飛空を揺さぶっているところを日向が見つけ、すぐにぎゅっと抱き上げてやる。

「飛茉おはよ」
「しょーちゃ!おはよ。ママいないの」
「ママとパパはおでかけしてるから翔ちゃんとラブラブしような〜」
「...する、!」

大好きな翔ちゃんから頬にキスしてもらい嬉しかったようで、すっかり機嫌の直った飛茉は日向に抱かれたまま研磨の配信してる部屋へ連れて行かれる。

「けんま、げーむちてるの?」
「仕事だからね」

どうやら日向と2人でゲームの配信中だったそうで、急に聞こえてきた子供の声にチャット欄が大騒ぎになっていたいたとか。一旦配信は中断され、大きいモニターで飛茉の好きなものを見せてやろうと「何が好き?」と研磨が飛茉に尋ねる。

「ひぃね、しょーちゃんがすき!」
「も〜!飛茉ってば!可愛すぎ!俺も好き!」
「翔陽、うるさい」
「ご、ごめん」
「じゃあ翔陽のまだ世に出てないプロモーション見せてあげる」

日向の膝の上で、大好きな日向の動画を大迫力で見れるというこの上ない幸せに飛茉は大喜びで思わず研磨も笑顔になっていた。その後飛空は黒尾に抱き枕にされていたようで、暑そうな顔で寝ているところを研磨と日向に写真を撮られていた。

「子供、可愛いね」
「だな〜?」
「まああの2人は特別顔も可愛いし、影山に似ず頭もいいし...いいね」
「...研磨さん?」
「ああ、ごめん。つい」
「子供使ってお金儲けは俺よくないと思うな〜?」
「しないよ、大丈夫」

そして、両親揃って迎えに来たが帰りたくないと子供達2人はわんわん泣いてしまい研磨が「いつでもおいでよ、だから今日は帰りな」と2人に言い聞かせる。珍しい光景に日向も黒尾も驚いて無言で目を合わせる。「何?なんかおかしい?」と研磨が不機嫌そうにいうので2人は首を激しく振って「そんなことないです」と否定するのだった。



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