小説 | ナノ


▼ せな様

「ただいま〜!あ、もしかして翔ちゃん来てる?!」
「おかえりなさい。日向くんならリビングで待ってるよ」
「ママ!飛茉、変なとこない?可愛い?」

そう言って制服の皺を手で伸ばして前髪を整える娘の姿が愛らしくて、笑顔で「もちろん世界一可愛いよ」と返事をするが希望の返事ではなかったらしい。

「違う!本当のやつ!」
「本当に思ってるよ?飛茉はいつも可愛い」

むす、っと唇を尖らせながらもわたしが頬にキスをすると返してくれ愛おしくなる。リビングに入ると先程までのむすっとした顔はどこへやら。満面の笑みで日向くんの名前を呼んでいた。

「パパ!翔ちゃん!ただいま!」
「飛茉、おかえり〜。お邪魔してます」
「翔ちゃんの靴あったからすぐわかったよ」
「制服久しぶりに見たけど、良く似合ってる!相変わらず飛茉は可愛いな〜」
「俺の娘なんだから、当たり前だ」

お目当ての日向くんに褒めてもらったことが嬉しいのか、飛茉はこれでもかというくらいニコニコしながら日向くんにハグと挨拶のキスをする。飛雄くんより先に日向くんへ挨拶したのが気に食わなかったのか、少し拗ねてる表情はさっき玄関で飛茉が見せた顔とそっくりで思わず1人で笑ってしまう。

「お兄ちゃんは?まだ?」
「飛空は今日遅くなるって言ってたけど...」
「あ!わかった!またデートでしょ!」
「ふふ、どうかな」
「え〜!飛空彼女いんの?」
「多分ね!言わないけどバレバレ」
「飛茉は彼氏とかつくんねぇの?学校でモテるだろ」
「飛茉は翔ちゃんと結婚するからいい」
「それは俺が許さねぇっていつも言ってんだろ」

飛雄くんが日向くんと飛茉の間に割って入り、飛茉が怒っている様子が見える。玄関の空いた音が聞こえ、飛空を出迎えに行こうとすると飛茉が走って玄関へと向かう。あら、珍しいと様子を見に行くと飛茉が飛空に泣きついていた。

「ただいま。どうした?」
「...パパがむかつく」
「あ〜翔ちゃん来てんの?」

帰ってきた飛空に全力で抱きつきながら飛茉はこくんと頷き「パパが翔ちゃんと飛茉の邪魔してくる」と飛空に訴えている。飛空は困ったように眉を下げ飛茉の頭をよしよしと撫でている姿は親バカと思いつつも絵になるなぁ、と見入ってしまう。

「も〜!ママ!ちゃんとパパのこと捕まえといて」
「飛空、おかえり」
「母さん、ただいま」
「お弁当出しといてくれる?」
「今日も美味しかったよ、ありがとう」

3人でリビングに戻ると日向くんが帰る準備をしていて飛茉が「もう帰るの〜?」と日向くんを引き止める。

「父さんただいま。翔ちゃんも久しぶり」
「おかえり」
「飛空また背ぇ伸びた?!」
「へへ、翔ちゃんはとっくに越したよ」
「くっそ〜!影山め...!」
「翔ちゃん晩御飯食べて帰ろ?」

飛茉が日向くんの腕に抱きついたまま離れようとしない。日向くんは困ったようにわたしに目配せをしてくるので「日向くんの分もあるよ」と答えると日向くんより先に飛茉が喜ぶ。

「ね?聞いた?まだ一緒にいよ?」
「も〜飛茉その顔ずるい!可愛い!」
「やったぁ!」

飛茉が大喜びで日向くんに抱きついていて、飛空は「よかったな」と飛茉に言ってあげている。飛雄くんがキッチンに入ってきて後ろからわたしを抱きしめてくる。

「ん〜?どうしたの?」
「飛茉が...」
「ふふ。いつものことでしょ?翔ちゃん翔ちゃんって」
「本当に結婚したらどうすんだ」
「どうしようかな〜」
「名前さん...!」

不満げにわたしの名前を呼んでくる飛雄くんが可愛いが少し重たくなってきたことを伝える。

「ほら、あっち持って行くから待ってて?」
「嫌だ」
「も〜」
「母さん、弁当...俺、邪魔した?」

飛空が気まずそうにキッチンを覗いてくるので「邪魔じゃないよ」と笑いながら答え、空っぽの弁当箱を受け取って背中に飛雄くんを引っ付けたまま洗い始めた。

「飛空、今日お前デートだったのか」
「は?!え、な」
「今度家に連れてこい」
「いいよ!まだ、付き合ってないし...」
「へぇ〜まだ、ねぇ?」

にやにやしながら飛雄くんと飛空を見つめると真っ赤な顔をして飛空が慌てていて。いつもは大人びてる飛空が年相応の少年で思わずちょっかいを出してしまう。

「どんな子なの?可愛い?美人?」
「...言わない」
「ふふ。ごめんね?飛空」
「別に。...明日は夜ご飯いらないから」
「家に食べにきたらいいのに〜!」
「その子、父さんのファンだから嫌」

ぷい、っとそっぽを向いてキッチンから出て行った飛空。飛雄くんと目を見合わせてふふ、と笑い合い軽く唇を重ねる。

「2人とも巣立ったら世界一周でもしちゃおっか?」
「おう」
「飛雄くん行きたいところある?」
「俺は名前さんがいれば何でもいい」
「わたしも。温泉旅行もいいな〜」
「最近一緒に入ってねぇから、家族風呂予約するか」
「あれ?すぐ行く感じ?」
「2日くらい2人で平気だろ」
「え〜!大丈夫かなぁ?」
「日向に面倒見させてもいいし」

さっきまで日向くんにヤキモチを妬いていたとは思えない扱いで、肩を揺らして笑ってしまう。ご飯の用意が出来たので飛雄くんにも手伝ってもらいテーブルに並べる。

「いただきます」

と、みんなの言葉が響き「美味しい」と口々に言ってくれるこの時間が本当に幸せで。いつまでも、こうやって過ごせたらいいなぁと思う。飛雄くんに「やっぱり、温泉旅館は家族みんなで行きたい」と告げると少し不満そうだったが「わかった」と了承してくれ来月の予定が決まったのだった。



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