小説 | ナノ


▼ ウォル様

「おにーさん、だぁれ?」
「こぁいひといる...」

飛空、飛茉はいつも通り会場内を探検していると背の高いスーツを着た男の人に出会う。選手ではないことは明らかだが、自分の父親より背が高いことに気付き飛空が興味津々で話しかける。

「お、子供じゃん。お前ら迷子か〜?」
「迷子じゃないもん!探検だもん!」
「...もん!」
「待て、お前ら影山んとこの子供だな!」
「パパ知ってるの?影山飛空くんです!」
「知ってるぞ〜!パパが学生の時から、よーく知ってる!クロって呼んで良いぞ」

そう言い、子供達の目線までしゃがむと黒尾は嬉しそうに飛空と飛茉の頭を撫でる。

「お前らのママが今ごろ心配してるぞ」
「ママに探検してくるって言ったよ!」
「ママおこってる?」
「怒ってないけど、寂しいって泣いてるかもなぁ」

黒尾が少し意地悪気にそう言うと、飛空と飛茉は2人して顔を見合わせて泣きそうな顔をして黒尾を見上げる。

「ママ泣いてる?」
「えんえんちてる、かわいそう」
「な?可哀想だからオニーサンと一緒にママんとこ戻ろうな」

2人はすっかりしょぼくれてしまい、黒尾は「やべぇ、言いすぎたな」と内心焦っていた。2人の気分を上げるために父親の話をしてやると、飛空はすっかり機嫌を直してにこにこと黒尾と話していたが飛茉はしょんぼりしたまま下を向きながら歩いていた。

「飛茉ちゃんは、パパのどこが好き?」
「...じぇんぶ」
「全部か〜!飛茉ちゃんのパパかっこいいもんな」
「うん。ひぃ、パパしゅき。パパも、ひぃのことしゅきってゆってる」
「飛空くんも!パパかっこいいから好き!あとママもひぃちゃんも好き!」
「ひぃも、ママもにぃにもしゅき」
「あの影山が結婚して子供産んで、こんな良い子達に育つとはなぁ」

黒尾の独り言は子供たちには届かなかったようで、飛空は飛茉が少し元気になってくれて嬉しいようだった。にこにこと「ひぃちゃん」と飛茉に話しかけていて、黒尾は2人の仲の良さにほっこりと自分が今仕事で会場にいてることを忘れるほど癒されていた。

「黒尾さん!」

パタパタ、という効果音と共に名前が「すいませんうちの子が...!」と走ってくる。よく見かける光景に、まさか自分が立ち会うと思っていなかった黒尾は謝る名前を見ながら「大丈夫ですよ」とありきたりな返事しかできずにいた。

「ママごめんなさい」
「...しゃいっ」

いつもは「ママが迷子だった!」と屁理屈を言ってくる飛空が素直に謝るので名前は目をまん丸に見開いて黒尾を見る。きっと何かを言ってくれたんだろう、そんな視線に黒尾も耐えきれず先程の経緯を説明する。

「ちょびっと意地悪言いすぎたかもしんないっす。すんません」
「いえ!むしろこの子達常日頃から大人に甘やかされて育ってるんでそれくらい言って頂いた方が助かります...!ありがとうございます」
「ママもう泣いてない?」
「えんえんちた?」
「ママずっと飛空と飛茉が心配で泣いてたんだよ〜。勝手に言っちゃダメっていつも言ってるでしょ?」

名前が少し語尾をきつくそう告げると、飛空と飛茉は同時に泣き出し「えーーーん」と子供たちの泣き声が響く。名前が優しく抱きしめて、2人の子供の頭を撫でて「ママも怒ってごめんね?」と頬にキスしてるシーンは映画さながらで黒尾は思わず息を飲む。

「お疲れ様、っす」
「お、おお影山か」
「子供らなんか迷惑かけました?すんません」
「いやお前らの学生ん時に比べりゃ可愛いもんよ」
「俺ら、すか?」

きょとん、と黒尾を見ている飛雄はまさか自分のことを言われるとは思っておらず腑に落ちないような顔をしながら家族の元へと歩んでいく。映画のワンシーンに、飛雄も参加し「すげぇな」と独り言を呟いていると横から同意の声が聞こえ振り向く。

「黒尾さん、お疲れ様です」
「お〜井上さん!お疲れ様っす。今日も影山絶好調でしたね」
「今日は、久しぶりに名前さん来てたからなぁ」
「ああ、東京で試合すんの久しぶりなんでしたっけ?」
「そうそう。まあ、それだけが理由ってわけでもないけどやっぱり名前さんと子供達が来てると雰囲気良いんだよ」
「ホォ〜愛の力っすねぇ」
「黒尾さん結婚は?」
「まだまだっすよ。井上さんもまだっすよね?合コンでもします?」
「黒尾さんイケメンだからやめとくわ〜」
「またまた〜」

そんな話を男2人がしていると、飛空と飛茉が真っ赤な目をして黒尾に近づいてくる。「どうした〜?」としゃがみながら飛茉の頬を突いてみる。

「っぐす...クロお兄さんにごめんなさいって」
「ごめんなしゃい」
「ごめんな、さいっ」
「おー!ちゃんと謝れて偉い!ママの言うことちゃんと聞いて、好き嫌いせずにいっぱい食べておっきくなれよ」
「「はーい!」」

素直な返事に愛おしい気持ちになり、早く結婚して子供欲しい...まず彼女か...。と遠い目をして影山一家を眺めるのだった。



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