小説 | ナノ


▼ 悠灯様

「名前さん!飛空くん、久しぶり」
「お久しぶりです〜!」
「だあれ?」
「井上さん、パパのお仕事の人だよ」
「こんにちは!影山飛空です!」
「おおおお〜〜〜!!!育ってる...!」
「次女が少し人見知りで...」
「妹は飛茉って言います!」

飛茉は名前の後ろにピッタリとくっついたまま動かない。井上が「こんにちは〜」と優しく声をかけるも固まったまま返事が出来ずぎゅっと名前のスカートを握っていた。

飛空は井上と手を繋ぎ、飛茉は名前と手を繋ぎ目的地まで一緒に向かう。アドラーズの選手控室に到着すると、中には牛島と星海が私服に着替え終わったようで談笑している。

「あ、井上さん!お疲れ様です!」
「お疲れ様、影山は?」
「ちょっとまだ打ち合わせしてるっぽいっすね」
「ご無沙汰してます」
「飛空、久しぶりだな」
「...!若利くんだ!」
「俺のことを覚えていたのか?」

牛島が飛空に近づき頭をぐしゃぐしゃと撫でてみせる。飛空は大喜びで、そのまま牛島に抱っこをねだり「高い!!!」とはしゃいでいた。

「こーらいくんだ!こんにちは!」
「おー!飛空背伸びたか?」
「伸びた!」
「この野郎、イケメンに育ちやがって〜!」

星海からも頭をぐしゃぐしゃに撫で回され「やめてよ〜!」と言っているがとても楽しそうに遊んでもらっている。飛茉も自分の兄が楽しそうに遊んでいるので気にはなるが、母親の側から離れられず遠くから眺めていた。

「飛空くんね、お兄ちゃんになったんだよ!」
「そうじゃん!ちゃんと守ってやれよ〜?」
「飛茉って言うんだよ!」
「おお。見事に名前さんにそっくりだな」
「こんにちは...バレーは好きか?」

牛島に急に声かけられ飛茉はぎゅっと母親の足にしがみついて隠れてしまった。

「む、怖がらせたか。すまない」
「こちらこそ、人見知りがひどくてすいません」
「ひぃちゃん!お兄ちゃん達優しいよ?」

飛空が優しくそう声をかけ飛茉の手を取り牛島と一緒に星海のところまで連れて行く。

「飛茉ちゃん、こんにちは」
「...こ、こんにちは」
「おお!挨拶出来て偉いな!」
「あのね、ひぃもね」
「ん、何だ」
「さっきのぐるぐるしたい!」

牛島の手を握りながら飛茉がそう告げると、牛島は照れたように手の甲を口元に当て「ああ、構わん」と返事をする。星海がニヤニヤした表情で牛島を見ているが、牛島は軽く咳払いをしてから飛茉を抱き上げていた。

「待ったか?」
「飛雄くん!お疲れ様」
「飛茉?珍しいな」
「ふふ、本当。飛茉から牛島さんに抱っこねだって遊んでもらってるみたい」

子供達は部屋に入ってきた父親に気付き「パパ!」と大きな声を出して飛空が駆け寄ってくる。
飛雄はぺこっと牛島と星海に会釈をし駆け寄ってきた飛空を抱き上げる。

「今日もパパかっこよかった!」
「おう、応援ありがとな」
「飛空くんの声聞こえた?」
「聞こえたぞ」
「やったあ!」

牛島が飛茉を抱き抱えたまま飛雄と名前の元へ来て、名前へ飛茉を返そうとする。が、飛茉が「あのね」と話し出したので牛島は耳を傾ける。

「どうした」
「...あそんでくれてありがと」

恥ずかしそうにしながらそういう飛茉に、牛島は生まれて初めて父性というものが芽生えたと後から言っていた。飛茉はそっと牛島の頬に手を当てて頬と頬を寄せチークキスを行う。牛島も海外遠征でこの挨拶に馴染みはあったものの、子供からされることはあまりなかった為少し動揺しながら名前に飛茉を返していた。

「飛茉、その挨拶は日本ではすんなって言ってるだろ」
「パパ、ママにちてる」
「パパはいいんだ」
「ひぃもしたかったもん」
「はいはい、そこまでね。飛雄くんもそんな怒らないの」
「飛空もちゃんとご挨拶してね」
「わかとしくん、こーらいくんあそんでくれてありがとう」

影山一家はそのまま控室を後にする。普段飛雄からよく家族の話を聞かされてはいたものの、実際仲睦まじいところを見せられると家族、結婚に憧れが出てしまう。

「井上さん、俺そろそろ結婚しよっかな〜?」
「星海はとりあえず相手作ってからな」
「そんな暇ねぇんだよなぁ」
「子供とは、やはり良いものだな」

牛島は飛茉の小さい手を思い出しながら、その場を後にした。次に会った時、飛茉にすっかり忘れられていて挨拶すると大泣きされ数日は落ち込んだとか。



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