影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「オイ」

飛雄くんの低い声が店内に響く。

「日向お前調子乗ってんじゃねぇぞ」
「は?!何?影山くんもしかして、名前さんが俺のプレーに夢中で嫉妬ですかぁ?!」
「んなわけねぇだろ!名前さんはな、いつも俺に夢中なんだよボゲェ」
「と、飛雄くん。落ち着こう、ね?」
「あぁ?!ちげーのかよ」
「違く、ないです...」

その瞬間店内の酔っ払い達から囃し立てる声と口笛が鳴り響く。恥ずかしいから本当に辞めていただきたい。日向くんはちゃっかりわたしがいた席に座っていて、わたしと飛雄くんだけが立ち尽くしていた。店員さんが新しい席を用意してくれて、結局2人で座ってしまいいつもと変わらない風景に「みんなと話してこなくていいの?」と切り出す。

「名前さん1人にする方が嫌なんで」
「ええ...」
「体調は?」
「問題ないよ、大丈夫」
「東京と違ってこっちは寒ぃから体冷やすなよ」
「うん、ありがとう」

飛雄くんの優しさが嬉しくてにこにこしていると、日向くんがグラスを持ってわたし達のテーブルまで戻ってきてくれた。とりあえず乾杯をする。

「影山、名前さん結婚おめでとうございます!」
「そうだ!ビデオレター!ありがとうございました」
「直接早くお祝いしたかったんで、よかったです!」
「おい、お前は早くあっち行けよ」
「何?何で?よくない?俺だって名前さんと話してーもん!」
「ダメだ」
「名前さんこんな束縛男と結婚してよかったんですか?」
「うるせぇぞ」
「ふふ」

日向くんと飛雄くんのやりとりが面白くてつい笑ってしまうと、飛雄くんの顔が更に不機嫌になる。

「影山く〜ん、名前さんの好きなところは?」
「お前まじで一回黙れボケ日向」
「え〜!あっちじゃ恋人自慢とか普通だったからなぁ」

すっかり海外のノリに馴染んでいた日向くんはぐいぐい飛雄くんに質問を続ける。面白がった菅原くんも混じってきて大騒ぎだった。

「名前さんの好きなところは全部。直して欲しいところはねぇ。これで満足かよ」
「ヒュー!!!!ラブラブじゃん!」
「名前さんは?影山のどこが好きですか!」

日向くんも菅原くんもかなりお酒が進んでいるようで、顔を真っ赤にさせながら手をマイクにしてインタビューがはじまる。

「全部、です」
「ダメ〜!全部以外でお願いしまーす!」
「ええ...!強いて言うなら...素直で真っ直ぐなところ、かな?」
「あの影山くんが!素直?!」

飛雄くんが日向くんの頭をガシッと掴む。いつも先輩に揉まれてる飛雄くんを見てきたのでなんだか新鮮でたくさん笑ってしまった。日向くんは予想通り明るくて人懐こくて、初対面だなんて感じさせないほどたくさん話してくれてとても楽しかった。

夜も遅くなり、飛雄くんとわたしは先に帰らせてもらうことにする。仙台のひんやりと冷たい風を感じながら手を繋いで歩いていると、飛雄くんが急に立ち止まる。

「なぁ」
「んー?」
「まだ言われてねぇ。日向に先越された」
「ふふ、わたしの旦那さんが1番格好良かったよ」
「そうかよ」
「聞いてきたの飛雄くんなのに、そっけないなぁ」
「うるせぇ」

飛雄くんにぎゅ、っと抱きつくと満更でもない様子で飛雄くんもわたしを抱き締め返してくれる。

「飛雄くんが1番格好いいし、1番大好きだし、これから先もわたしの1番はずっと飛雄くんだよ?」
「当たり前だ」
「機嫌、治った?」

返事の代わりに優しいキス。どうやら旦那様の機嫌は治ったようで、こんなにずっと一緒にいるのにまだヤキモチを妬いてくれる飛雄くんが愛おしくてたまらなくなった。
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