影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「あの!名前さん、ですよね?」

そう声をかけてくれたのは飛雄くんのファンの子で思わず固まってしまう。 

「私ずっと名前さんに謝りたくて」

わたしが何も言えずに黙っていると、そう彼女が切り出してきた。謝られる覚えがなく「え?」と声が出てしまう。

「あの日、私が先に名前さんと影山選手お話して欲しいって我儘言ったのに事実と違う噂が流されてしまって...それで試合観に来なくなったんですよね?」
「いや、えっと、その...。理由はそれもあるんですけど、あなたのせいではないので気にしないで下さい!こうして今は試合観にきてるし、もう本当に気にしてないので大丈夫ですよ」
「...よかった。また名前さんが試合観に来れるようになって、本当に良かったです」

目の前の飛雄くんのファンの子が少し涙ぐんでしまい、わたしは思わず彼女の手を取る。

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいです」
「私こそ、ありがとうございます」
「だからもう気にしないで」
「はいっ...!あと、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」

あの日からずっと気にしてしまっていたのなら本当に申し訳ないことをしてしまったな、と目の前の女の子に同情する。彼女のせいでは100%ないし、たまたま色々なことが重なってしまっただけなので本当に気にしないで欲しい。そんな気持ちを込めて彼女の手をもう一度強く握りその場で別れた。

その後莉緒ちゃんと会場前で合流し、一旦2人でホテルへと戻った。莉緒ちゃんは明日も仕事があるのでホテルのロビーでお別れをする。お茶をしながら莉緒ちゃんと牛島選手の話を聞き盛り上がっていた。新幹線の時間もあるので莉緒ちゃんを駅まで送り、ホテルへ戻ろうとすると烏養さんから電話が入っていたことに気づく。

「もしもーし!電話気づかなかった、すいません」
「お〜!名前ちゃんいまどこだ?飯食いに来いよ!影山まだ合流出来なくて暇だろ?」
「え!いいんですか〜!今友達を駅まで見送りに来てて」
「じゃあ車で迎えに行くから適当に待ってて」
「ありがとうございます〜!」

飛雄くんに「莉緒ちゃん見送って、今から烏養さんとご飯食べるね」と連絡を入れておく。既読はまだ付かないところを見ると取材長引いてるのかなと、飛雄くんに早く会いたくなってしまった。
烏養さんの車に乗り込み挨拶がてら「妊娠しました」と報告すると烏養さんが驚いて変な声が聞こえる。

「おま、え!そういうことはもっとちゃんと報告しろよ?!」
「え〜!そう言われましても...」
「安全運転で行くわ」
「ふふ、ありがとうございます」
「男?女?」
「まだはっきりはわかってないんですけど、多分男の子かなぁって先生が言ってました!」
「お〜〜、影山が父親になんのか...」
「飛雄くんもうパパしてくれてて、毎日お腹に話しかけてくれるんですよ」
「はぁ〜〜〜〜」

烏養さんのため息に思わず笑ってしまい、そのまま近況報告しながらお店に到着する。店内へ入るとほぼ借り切りのようで先程顔を合わせた烏野OBさん達の面々もいてるようで烏養さんに「これ、わたしが混ざっていいやつじゃないと思うんですけど」と伝えるが「大丈夫、大丈夫」と軽くあしらわれながら席に着く。え、大丈夫じゃないやつですよね?
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