影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




広すぎる会場、たくさんの参列者、慣れないドレスにわたしは胃の中のものが全て出てしまいそうだった。

会場は今まで飛雄くんがわたしに送ってくれた花の種類をメインに、たくさんの花で飾りつけた。特に1番最初にもらったデルフィニウムは大のお気に入りでこの後お色直しのヘアメイクにも取り入れてもらっている。

なんとなく緊張からか、当事者の自覚もなくふわふわした気持ちのまま披露宴が進んでいく。ファーストバイトでは口の周りをクリームまみれにした飛雄くんが大ウケで、たくさんの人にカメラを向けられ少し不満気に笑ってる姿が可愛かった。後で誰か写真ください。

ゲストのスピーチは2人で絶対に烏養さんにお願いしようと決めていたので、スピーチを聞きながら恥ずかしいやら嬉しいやらで頬に熱が集まる。

そして歓談のタイミングでいち早くわたしの友人達が集まってきてくれ、少しほっとする。

「名前〜!めちゃくちゃ綺麗!おめでとう!」
「旦那さんめちゃくちゃ背高いね?!」
「バレー選手と結婚とかやるじゃん〜!おめでとう!」

と大学時代の友人が口々に話してくれ、笑顔で返す。写真撮影を終えると次々にバレー関係者の方達に囲まれて必死に笑顔で対応する。見たことのある選手ばかりでわたしは夢のような時間を過ごすことになった。

お色直しを終え、今度はブルーのカラードレスに着替える。緊張でガチガチのままキャンドルサービスを終え自席に戻ると思わず「ふぅ」と息をついてしまった。脳内でもう一度この後の流れをおさらいしているといきなり予定と全く違うBGMが流れて飛雄くんの方を勢いよく見る。

「さぁ、ここで新郎飛雄さんから新婦名前さんへのサプライズです!皆様ご注目ください」

もうすでに涙腺が崩壊しそうで何が起きても泣いてしまう自信しかなくて、そんな顔で飛雄くんを見ていると飛雄くんは優しく微笑んでくれてどっちが年上かわかんないな。

「飛雄さんは以前から名前さんに花束をプレゼントされることが多いそうで、今回の会場も今まで飛雄さんが名前さんへ渡された花の種類での装飾がメインとなっております」

司会の方が話している間に飛雄くんは会場の端の方へ移動し、籠をスタッフさんから受け取っていた。

「そして皆様、今テーブルに色とりどりな花があると思います。そちらを新郎飛雄さんの持つ籠にお祝いの気持ちを込めて入れて頂けますでしょうか?」

その瞬間から会場はわっと盛り上がり、各所から「おめでとう」と言う言葉が飛び交う。化粧が崩れるといけない、と必死で我慢していた涙はもうとっくに我慢を超えて流れ出していた。

「さて、モニターをご覧ください!」

モニターに目線をやると、わたしが撮っていた飛雄くんからもらった花束の写真がスライドショーで流れ出す。花束単体の写真もあれば、一緒に写ってる写真もありいつの間に?と驚いたが2人と共有のアルバムにいつも入れていたなと思い出す。こんなサプライズ、聞いてない。わたしの涙に釣られて友人達も泣いているようだった。その顔を見てわたしは更に涙が込み上げてくるのがわかる。

BGMの終盤、籠いっぱいに花を持った飛雄くんが目の前に。スタッフさんに促され前に出るがもう泣きすぎて足元もおぼつかない。会場がもう一度盛り上がりを見せ、2人でモニターへ目線をやると1番最初に撮ったユニフォーム姿の飛雄くんとファンだったわたしのツーショットが表示されていた。

「き、聞いてない」

必死に絞り出したその一言は可愛げなんてあったもんじゃなかった。

「サプライズなんだから言わねぇだろ」

花を受け取ろうと待っていると、籠はスタッフさんが回収し飛雄くんがポケットから何かを取り出す。

「名前さんはいつも飛雄さんに感謝の気持ちを込めてお手紙を書かれているそうですね?」

司会の方が急に話し出して、わたしは肯定する。まだ何が起きるかはわかっていなかった。

「飛雄さんは手紙を書くのが苦手だ、ということで今までお受け取りされたことはないと聞いております」

ここでやっと進行の意図がわかり、わたしは顔を手で押さえる。無理だ、耐えれる気がしない。

「名前さんへ」

目の前の飛雄くんが手紙を読み出して、読み終わるまでわたしは情けないけどずっと本当にずっと泣いていた。手紙を読み終わった飛雄くんと目が合う。なんで、なんで愛は言葉で伝えきれないんだろう?どうして愛の単位はないんだろう?この込み上がる愛はどうやったら飛雄くんに伝わる?そんなことを考えながらわたしは正面から飛雄くんに抱き着いて「ありがとう」と告げる。

もうみんなが見てるとか、そんなことは関係なかった。わたしはヒールのおかげでいつもより少し近くなってる飛雄くんにキスをする。

会場からはお祝いの拍手と「おめでとう」の歓声で大騒ぎだった。
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