季節は過ぎ、4月某日大安。
わたしは今日、飛雄くんとまた一歩夫婦の階段を登ります。
「飛雄さん、あなたは今名前さんを妻とし神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも病めるときも喜びのときも悲しみのときも富めるときも貧しいときもこれを愛し敬い 慰め遣え共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
飛雄くんと目が合う。
「はい、誓います」
「名前さん、あなたは今飛雄さんを夫とし神の導きによって夫婦になろうとしています。汝健やかなるときも病めるときも喜びのときも悲しみのときも富めるときも貧しいときもこれを愛し敬い 慰め遣え共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
また、飛雄くんと目が合う。
「はい、誓います」
2人で選んだ指輪を交換し、飛雄くんがわたしのベールを上げる。そして誓いのキスを。リハーサルでは頬にしていたのにここにきて急に唇にされ緊張と驚きで固まってしまった。飛雄くんは嬉しそうに笑っている。リハーサルと違うことするのやめてよ!そんなことを考える余裕は少しあった。
結婚証明書に署名をし、2人で掲げる。いろんな方向からカメラを向けられどれを見ていいか分からず戸惑ってしまった。ぎこちない笑顔を参列してくれている家族友人に向けながら、飛雄くんと退場のために腕を組む。
ゆっくりと、一歩、一歩。ドレスを前に蹴るようにして転けないように歩くので精一杯だった。最後まで背筋をピンと伸ばし後ろの扉が閉まるのを感じほっと無でを撫で下ろす。
「名前さん緊張しすぎ」
「飛雄くんがしなさすぎるの」
「キスした時すげぇ驚いてただろ」
「だって!リハで!ほっぺって!」
飛雄くんの胸をぽかぽかと叩くと、触れるだけのキスを急にされ黙るしかなくなる。
「まじで、めちゃくちゃ綺麗っす」
「今?!」
「誰にも見せたくねぇ」
「ふふ、嬉しい。飛雄くんも、格好良すぎるくらい格好いい。惚れ直しちゃった」
「っす。俺はまあ、いつも名前さんに惚れ直してるんで」
そんな殺し文句を一つ落とされ、わたしは自分の顔がにやついていることに気づいたが止めれそうにない。
式場のスタッフさんに誘導され、次は披露宴の準備に取り掛かる。披露宴にはアドラーズの選手の方々や飛雄くんの元チームメイトの方々やたくさんのバレー関係者の方々が参列されるということでわたしはすでに緊張していた。
招待客リストを作っている時日向くんの名前がなく、不思議に思い聞いてみるとわたしたちの式の日程のタイミングで新しいチームのトライアウトと重なっていて大阪にいてるそうだ。会えなくて残念だなぁ、会いたかったなぁと思っているのが飛雄くんにばれてしまい少し面倒なことになった思い出。
挙式とはまた違うドレスに着替え、自分たちで選んだBGMと共に腕を組んで扉の前で待機する。
「飛雄くん、わたしのこと選んでくれてありがとう」
扉が開く直前にそう伝えると、飛雄くんは嬉しそうに微笑んで「俺も」と一言返事をしてくれた。
扉が開き眩しいライトの中、たくさんの拍手とたくさんの笑顔に囲まれてわたし達は今幸せの絶頂にいた。いや、これからもずっと幸せの絶頂に居続けるんだ。
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