影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ





飛雄くんのロングインタビューが放送されてから、憑き物が落ちたかのようにわたしは精神的にも落ち着いた。今思い返すと遅めのマリッジブルーだったのかもしれない。わたしの気分で飛雄くんを振り回して心から申し訳ないと思ってます。いい大人がわんわん泣いて恥ずかしかったな。反省してます。

そして、今日は約半年ぶりに飛雄くんの試合を生で見る。こんなに嬉しい朝はなかった。飛雄くんを送り出してから飛雄くんの試合を見るなんて、なんて贅沢なことなんだろう...!飛雄くんと井上さんと相談し(主に井上さんとだけど)関係者席にカムフラージュで女の子を1人連れて行くことになった。関係者席にわたしが1人で座ってるとやはり目立ってしまうらしい。そして今回は同期に付き合ってもらうことにしてたので、会場前で合流する。

「誰かがあたしのこと嫁だと思ったらどうしよう〜!」
「どうもならないよ」
「ねぇ、その旦那以外には塩対応やめなよ」
「あんまおっきい声でそういうこと言わないで」

同期の声が大きく周りを見るが、特に誰も気に留めてないようだった。関係者入り口から入り、席に着く。今までとはガラッと違う景色に少し戸惑いながらもドキドキが抑えられない。バレーボール初観戦の同期へ簡単にルールを説明するがこればかりは実際見てみないとピンとこないはず。

「まあ、とりあえずボール落としたら負けってことだけは分かった」
「うん。まあそれわかればいいよ。あとは影山選手がめちゃくちゃ格好いいからずっと見てた方がいい」
「えー、せっかくならスパイク?バンバン打つ人見るわ」
「なんでなの?!」
「目立つ人に目いかない?」
「影山選手が試合中1番ボール触るし目立つんですけど?!」
「えー」

そうこうくだらない話しを続けていると、選手が入場してきて飛雄くんの姿が見える。久しぶりにコート上に立つ飛雄くんの姿を生で見てわたしは感極まって涙を流していた。隣の同期がドン引きしてるのはわかってる。

「え、?朝会ってるんだよね?」
「それとこれとは、違うの〜〜〜」
「オタクってすごい」

そう言いながらもティッシュを差し出してくれる同期はやっぱり優しいと思う。試合も開始し、いつものように飛雄くんのプレーをただひたすら目で追い続ける。たまに同期へのルールの補足や今のプレーの何が凄かったかなど簡単に解説していく。後半になるともう同期もただ試合にのめり込み点が入るたびに2人で声を出して喜んだ。

「バレーめっちゃ楽しいね?!手に汗握ったわ」
「でしょ〜?!?!?!」

同期がバレーを楽しんでくれたことも嬉しかったし、飛雄くんのプレーを生で見れて本当に嬉しくて今日は天にも登る気持ちだった。ある程度お客さんも減り井上さんが声をかけてくれたので選手控え室に向かう。何度も申し訳ないから、と断ったがどうやら飛雄くんがお呼びのようでわたしが断れる立場ではなかった。

「影山選手!お疲れ様です!」

飛雄くんの姿を見つけ、思わず癖でそう呼んでしまうと飛雄くんの顔がいっきにふにゃと柔らかくなった。

「なんかその呼び方、懐かしくて。やべ、にやける」
「今日も世界一かっこよかったです!」
「やめろ、恥ずかしいだろ」
「何でよ!いっつも言ってたじゃん」

井上さんと同期を置いてけぼりにしてしまい、一気にわたしまで恥ずかしくなる。

「はじめまして!名前ちゃんに連れてきてもらったんですけど、バレーめちゃくちゃ楽しかったです!」
「アザス。いつも嫁がお世話になってます」
「え〜〜〜?!?!飛雄くんそんなこと言えるようになったの?!」
「名前さんうるせぇ」

久しぶりの試合後でテンションが上がってしまってるのは否定できない。飛雄くんの照れ隠しにすらにやにやしてしまう。同期はどうやら星海選手が気に入ったようで握手したい!と会場にもう一度戻って行った。さっきまで賑やかだった控え室には気づいたらわたしたち2人しかおらず自然と距離が近くなる。

「はあ〜〜〜〜〜。格好良かった」
「あんま近寄んな」
「ユニフォーム姿の飛雄くん近くで見ることないんだもん」
「まだシャワー浴びてねぇから、やめろボゲェ」

最近はこの飛雄くんの口の悪さもすっかり慣れてきてしまい、最初の猫被り飛雄くんが少し懐かしい気もする。嫌がる飛雄くんが珍しくて、ついついちょっかいを出し続けてると荒々しく唇に噛みつかれ「帰ったら覚えとけよ」と宣戦布告されてしまう。出来心だったんです...調子乗りすぎて、すいませんでした。
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