影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




結局寝たのは夜中になっていて、朝もルームサービスの朝食が届くまでぐっすり2人で寝てしまっていて大慌てで準備をした。
昨日飛雄くんからもらった花束を潰さないようにタクシーで家へ帰りお昼すぎにまた駅前で待ち合わせをする。ふとした瞬間左手の薬指を見て、ついついにやけてしまう。

目的の場所に着くと、飛雄くんはもう着いているようでただ立っているだけなのに格好良すぎてどうにかなりそうだった。

「お兄さん、お一人ですか?」
「あ?」

後ろからそう声をかけると、不機嫌そうに振り返ったかと思うと一瞬で表情が変わる。

「いや、彼女待ってるんで」
「えー?彼女さんいるんですか〜?」
「ハイ、ここに」

わたしの悪ノリに乗ってきたかと思えば飛雄くんに片手で両頬を挟まれ遊ばれる。頬を挟まれながら話すとその顔が飛雄くんのツボにハマったのか珍しく楽しそうに笑って何度も繰り返してきた。

「も〜!痛い!」
「すんません。でもこれなんか癖になる」
「いひゃい」
「...っく、ふはは」

この笑顔を見れるなら少しくらい頬が犠牲になってもいいか。そんなことを考えながら手を繋いで目的地へ向かう。
ある程度物件はもう絞っているので、あとは内覧をして気になるところがないかの確認程度だった。

飛雄くんは今の部屋を契約したのは親御さんだったそうで、自分で初めて選ぶので少しそわそわしていて可愛い。担当の方も感じのいい男性の方で名刺交換をし、早速一軒目から回ることになった。車内は和やかなムードで「新婚さんにお勧めの物件ですよ〜」と担当さんもおすすめの物件でとても楽しみだ。

「ひろ〜〜〜〜い!ここ、いいですね!」
「間取りは1Lなんですけど、リビングが吹き抜けのアイランドキッチンで人気なんですよ」
「コンロも3口ある〜!」

わたしは主にキッチン周りを確認して、飛雄くんはうろうろとわたしの周りをついて回っていた。

「お風呂場見にいこっか?」
「おう」

わたしの後ろをついてくる飛雄くんが可愛くて、つい振り返って見てしまう。飛雄くんは急にわたしが止まって驚いたのか首を傾げていた。その姿もまた可愛くて「ふふ」と1人で笑ってまた足を進めた。
お風呂場もとても広く、バスタブも昨日のホテルほどではないが十分な広さだった。

「お風呂も広くていいね」
「こんだけ広けりゃ昨日みたいなことできるな」

担当さんがリビングにいることを良いことに飛雄くんがにやにやしながら耳元で聞いてくる。昨日のことを思い出してぶわっと熱が顔に集まって思わず飛雄くんを睨む。

「っ、ばか、」
「思い出した?」
「うるさい!ばか!」

飛雄くんの胸をぽかぽかと叩きながら隙あらばキスしてこようとする飛雄くんを避けながら浴室の写真をスマホで撮りリビングに戻る。

「いかがですか?」
「ここすごく気に入りました!立地もいいし、キッチンも浴室も水回りもいい感じです」
「旦那様もいかがでしたか?」
「あ、俺もいい感じっす」

寝室予定の部屋も割と広くて窓もあるし、朝日を浴びれるのは飛雄くんの体に良さそうだ。飛雄くんと担当さんが話している中わたしはベランダの窓から外を見てここで飛雄くんと生活していくイメージを想像する。まだ一部屋しか見てないけど、ここがいいなと思い契約することに決めた。

「ね、飛雄くん」
「なんすか?」
「ここに決めようかなって思うけど、他も見に行く?」
「いや、俺はここ気に入りましたよ。風呂も広いし」
「風呂場は他に候補で選んで頂いていたところと比べるとここが1番広いですね」
「よし!ここにします!」

そう伝えると担当さんは素早く契約の準備をしてくれ、思ったより早く予定が終わる。ありがたい。3月には入居できるそうで、2人での新生活がいよいよ目の前になってきた。

「今更なんですが、男子バレーの影山選手ですよね?」
「あ、ハイ」
「去年のオリンピック見てました!やっぱり背高いですね〜!ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「奥様も綺麗で羨ましい限りです」
「いえいえ、そんな」
「名前さんは綺麗っすよ」
「飛雄くん、そういうのは社会人のマナーとして言わないの!」
「仲良いですね〜!ぜひこれからこの家で素敵な生活送ってください」

不動産屋を後にして、当初の予定ではそのまま出かけようと話していたが、さすがに昨日からの疲労でわたしの体力は限界に近づいていた。
タクシーの中でもうとうとしてしまい、飛雄くんの肩を借りて少し寝てしまっていた。到着していたのは予定していたショッピングモールではなく、自宅で飛雄くんの優しさに感動したのと同時にもう少し体力つけようと心に誓った。
 
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