影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




食事も終わり、ボトルも1本空けたタイミングで飛雄くんがお手洗いに向かう。1人になった個室で酔いを覚ましながら、せっかくなのでと夜景を写真に撮って思い出に残していた。
コンコン、と言うノックの音が聞こえて店員さんかと思い振り返ると飛雄くんが立っていた。

ー赤い、それはそれは真っ赤な薔薇の花束を持って。

その瞬間今から何が行われるのか察してしまい、先に目頭がきゅーっと熱くなる。視界がぼやけてきて、泣いてるわたしを飛雄くんが優しい顔で見ている。

「名前さん、」
「待って、む、むり。なみだ、とまんない」
「ちゃんとやるって言っただろ」
「今日なんて、聞いてないもん〜〜〜〜」

涙腺はガバガバに緩んでいて、次から次へと涙が出て溢れて止まらない。わたしの飛雄くんへの気持ちも溢れて止まらない。好き、大好き。

花束をそっとテーブルの上に置いて、飛雄くんが膝をつく。ポケットから四角い箱を取り出して目の前で開いてくれる。もうわたしは息をするのも忘れて飛雄くんを見つめていた。幸せすぎて、心臓が痛い。

「絶対幸せにするから、結婚して下さい」
「もう充分幸せなのに、わたしこれ以上幸せになるの?」
「まだまだこんなもんじゃねぇよ」
「そんなの、幸せすぎて死んじゃう」
「死なねーよ。で、返事は?」

膝をついてる飛雄くんの目の前にわたしも腰を下ろし、指輪を持っている飛雄くんの手に自分の手を重ね「はい、よろしくお願いします」と返事をする。

「飛雄くんのこともわたしが絶対幸せにするからね」

至近距離でそう伝え、そのまま唇を合わせた。飛雄くんは今までで1番優しく抱きしめてくれて2人で涙目のまま笑い合う。飛雄くんの頬に流れた涙を親指で拭ってあげ、また唇を重ねた。

「名前さん、愛してます」
「わたしも愛してるよ」

左手の薬指に光る指輪、テーブルの上にある薔薇の花束を見て夢じゃないんだと再確認する。
ソファに移動してからもしばらくわたしは涙が止まらず飛雄くんにしがみついたままだった。

「泣きすぎだろ」
「だってぇ、っ、飛雄くん格好良すぎて、ずるい」

ひっく、と嗚咽しながらも飛雄くんの肩を濡らしていく。

「あと名前さんにもういっこ」
「っ、何?」
「今日は、帰さねぇから」

そう差し出されたカードを見ると有名なホテルの名前が書いてあって、目を見開いて飛雄くんを見る。飛雄くんは目を細めて笑っている。格好が良すぎる。

「予約してたの〜?!聞いてないんだけど!」
「サプライズだから言うわけねーだろ」
「飛雄くんサプライズなんて出来たの?」
「うるせー」

泣きすぎてぐちゃぐちゃの顔をしてるわたしの目元に、唇を落としたかと思うとぐちゃぐちゃと頭を撫で回してくる。
それにしても飛雄くん、今日1日に色々詰め込んでくれすぎててわたしはもうキャパオーバーです。

そして驚くことに、飛雄くんはお手洗いに行ったタイミングで会計を済ませていたらしくわたしは自分の彼氏が出来る男すぎて感動していた。絶対この間まで彼女居なかったとか嘘じゃん。100人くらい抱いたでしょ。そんな冗談を脳内で考えれるほどには余裕も出てきて、少し落ち着いた。

「影山様、本日はご来店ありがとうございました。これからもますますのご活躍スタッフ一同楽しみにしております」
「こちらこそ色々ありがとうございました」
「もし良ければ奥様とお写真お撮りしましょうか?」
「いいんすか?じゃあ、お願いします」

どうやらお店のスタッフさんは今日のことを知っていたようで、店の入り口で花束を持ったまま写真を撮ってもらうことになった。奥様、なんて少しまだ恥ずかしくて擽ったいけど、これからはわたしの行動全てが飛雄くんに繋がるんだなと思うと背筋がピンと伸びる思いだった。

花束を2人で支えてカメラの方を向く。散々泣いたし、お酒も飲んだし化粧もヨレヨレの最悪のコンディションだけど今日のこの写真は宝物になること間違いなしだった。「名前さん」と呼ばれ飛雄くんの方を向くと髪の毛が跳ねてたようで、飛雄くんの手で整えてもらった。

ホテルに着いてからカメラの写真をチェックすると、2人とも緊張した表情で真正面を向いている写真と飛雄くんに名前を呼ばれてから髪の毛を直してもらってる一連の流れも全てカメラに収められていた。ああ、わたし飛雄くんのこと見てる時こんなに好きってわかる顔をしてるんだと思うと愛おしさが込み上げてきてネクタイを緩めている飛雄くんにほぼ体当たりで抱きついた。
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