「え〜?!じゃあ名前さんは俺らの春高見て、影山のファンになったんだ?!」
「はい、もう本当に今思い出してもあの時の春高最高でした...」
「主将名利に尽きるなぁ、大地!」
「なんだよそれ」
「え、てかなんでコーチと呑んでんの?できてんの?影山ヤキモチ妬くんじゃね?」
菅原くんのマシンガントークが止まることなく、お酒と共にどんどん話が進んでいく。ちょうど先日飛雄くんから菅原くんの話を聞いたけど、どうやらわたしと飛雄くんが付き合ってることは聞かされていないようだった。上手く説明出来そうにないのでわたしも笑って誤魔化す。
「いーなぁ、アイツら。公式戦のたびにこんな綺麗なオネーさんが応援来てくれてたんだろ?最高じゃん!!」
「お前は呑んだら本当声でかいな」
「アハハ...」
「てか今日成人式じゃん!影山呼んだら来るかな?月島も山口も!なんなら谷地さんも!」
飛雄くんはともかく、馴染みのある名前にわたしもファン心がくすぐられる。
「つ、月島くんと山口くんのサーブ&ブロックがいつも大好きで...」
「だべー!!名前さんわかってる〜!」
と、ついバレーの話にすぐ持っていってしまう。菅原くんがお手洗いに立ちふと隣に目を移すと烏養さんも澤村くんと楽しそう話しており、バレー談義に花を咲かせている。ふ、と烏養さんと目が合うと耳元で「話あんの、大丈夫か?」と聞いてくれる。首を縦に振り「また後で大丈夫です」と耳打ちすると肩を掴まれ間に人が入る。
驚いてその人物の顔を見ると、飛雄くんでまた驚いた。
「とっ、か、!げやまくん?!」
「何。つーか近いっす」
ぐいぐいとわたしと烏養さんの間に入り込んでくる飛雄くん。烏養さんは最初こそ驚いていた様子だが、そこからはニヤニヤとわたし達の様子を見ている。目の前の澤村くんに至っては驚いて声も出ない様子だった。
「か、影山!」
「澤村さん、久しぶりっす」
「お、おう。成人おめでとう」
「お〜!影山!早かったな!おめでと〜!」
驚いている澤村くんを尻目に席に戻ってきた菅原くんが嬉しそうに影山に話しかける。
「近くにいたんで。連絡あざっした」
「お前、こっち座れよ!そこ名前さん狭そうだろ〜!」
「いや、ここでいいっす。いいよな?」
「あ、うん」
突然話を振られ驚いていると、わたしの食べかけを「これ何?」と食べ始める。唖然とするわたし、以上に周りが一瞬息を呑んだのがわかる。わたしも一気に酔いが覚めて顔が真っ青になった。
「お、おい影山。さすがに名前さんと知り合いでもそれはやべーよ!バカやろう!」
菅原くんが場の空気を壊さないように明るくそう突っ込んでくれたが飛雄くんの頭の上にはクエスチョンマークが浮かんだままだった。
「?俺、名前さんと結婚するんで大丈夫っすよ」
「あーー!!!!!!!!」
飛雄くんの口を手で押さえようとするが、全てが遅くわたしの情けない叫び声とみんなの驚きの叫び声が店内に木霊する。幸いにも奥の新成人グループの方が賑やかであまり迷惑にはならなかった。いや、まあ、そういうことではない。
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