影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




飛雄くんと飛雄くんのお父様は普段からよく話す方ではないようで、車内でも静かな空気が流れていた。飛雄くんはわたしの隣に座りたそうにしていたが、さすがに恥ずかしいので助手席に座ってもらいわたしが後部座席に座る。ホテルまであと少し、というときに飛雄くんのお父様が静かに話し出した。

「まさか、こんなに早く素敵な人を連れてくるなんてな」
「おう」
「名前さんのこと幸せにするんだぞ」
「言われなくてもそのつもりだ」
「名前さん、飛雄のことよろしくお願いします」

ホテル前で停車し、ゆっくりと振り返りながら飛雄くんのお父様は頭を下げてそう言って下さった。わたしも慌てて頭を下げて「こちらこそよろしくお願いします」と伝える。にこり、と微笑んでくださった表情はまた飛雄くんを思い出させる表情で胸が暖かくなった。

「飛雄くん、明日成人式楽しんできてね」
「うっす」

車を降りてそう伝え、わたしはホテルへと入る。ホテルの部屋に入ると緊張から解放されいっきに疲れが押し寄せる。飛雄くんのご両親、とてもいい人達だったなぁ。とほっとするのも束の間、本当に飛雄くんと結婚するんだという実感が湧いてくる。こんな人生上手く行っていいのかな、何か悪いこと待ってたらどうしよう。

明日はわたしは特に用事もないので午前中で帰ってもいいのだが、烏養さんに連絡するとちょうど時間があるそうで夕方から食事に行くことになっている。飛雄くんも快く送り出してくれて、改めて結婚のご報告をすることになっている。飛雄くんからしなくていいの?と尋ねると「別にいい」とのことだったのでわたしから言わせてもらうことになった。

翌日ホテルの前で待っていると、烏養さんの車が迎えにきてくれ乗り込む。

「あけましておめでとうございます!」
「おお、おめでとう。今年もよろしくな」

取り止めのない話をしながら目的の場所へ向かうと、店内は同窓会の新成人の方達で賑わっていた。飛雄くんのご実家とは少し離れている場所だと思うので、きっと居ないはず。

座敷しか空いていないようで、2人には少し広い席に着く。先日も烏野高校へ微力ながら差し入れをしたところなので喜んでいる生徒達の写真を見せてもらいながら思い出話に花を咲かせて乾杯をする。

「んで、名前ちゃんから改まって報告ってなんだよ。仙台に引っ越しでもしてくんの?」

結局飛雄くんと付き合ったことを報告出来ていなかったので、烏養さんは全く想像出来ていないようだ。わたしも意を決して伝えようとすると、被せるよう「コーチ!?」と男の人の声が聞こえた。

「おお、菅原!こないだぶりだな、元気か?」
「元気っすよ〜。コーチこそこんな綺麗な人と呑んで、いいっす、ね、?」

菅原くんはわたしを見ると驚いた表情のまま固まり、そのまま私を指さして「名前さんだ!!!!」と店内に響くくらい大きな声で叫ぶ。

「うるせーぞ、菅原ァ!」
「え、いや、つい、すいません...」
「大丈夫です。あの、何度か会場でお会いしましたよね?」
「っハイ!!影山の試合行く度に名前さん探してました!たまに目ェ合ってました!スンマセン!」

菅原くんがガバッと90度に体を折り曲げて元気よく謝罪をする。その体育会系のノリが面白くて声出して笑ってしまった。

「あはは、菅原くん面白いですね」
「名前さん...!笑顔も素敵です...!」
「おいスガ、お前の声店の外まで聞こえてるぞ」
「大地!コーチ!!いる!!あと名前さん!」
「おー、澤村も久しぶりだな」

座敷でご飯を食べていたわたし達の席に菅原くんと澤村くんが混ざり、烏養さんが向かいの席からわたしの隣に移動してくる。
烏養さんから烏野のファンだと紹介され、恥ずかしい気持ちもあったが彼らにとって最後の春高だったあの試合でファンになったことを伝えるととても喜んでくれた。まさか何年か越しに烏野の元選手達に直接お話をする機会があるなんて夢にも思っていなかったので舞い上がってしまい、お酒もどんどん進む。飛雄くんからの連絡に気付けずみんなで楽しく呑んでしまっていて、反省しかありません。以後気をつけます。
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