影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




あの後飛雄くんとたくさん話して、ひとまず飛雄くんの成人式のタイミングで一緒に仙台へ向かうことになった。そんな大事な時に一緒に行っていいのか?と不安になると飛雄くんは「俺が、名前さんと一緒に行きたい」と言ってくれる。もちろんアポ無しでお伺いするわけにもいかず、飛雄くんからご実家へ先に電話で説明してもらうことになった。

成人式前日。

「ど、どこか変なとこない?!大丈夫かな?メイク濃い?手土産も東京バナナとかベタすぎるかな...胃が痛い...」
「大丈夫、名前さん今日も可愛いっす」
「ちが...いや、嬉しいけど...今はそれどころでは...」

飛雄くんの家が近づくにつれわたしの挙動はおかしくなり、さっきからずっと同じ話を繰り返している。

「ここっす」

と、立派な一軒家の前で立ち止まり深呼吸をする。もう少し深呼吸してから、と思っていると飛雄くんがインターホンを鳴らし「俺」と告げる。心の準備させてもらいたかった。心臓が口から飛び出そうなほど緊張しながら、玄関のドアが開くのを待つ。中から現れた飛雄くんのお母様は思っていたより小柄な方で、とても優しそうな方だった。

「初めまして、名字名前と申します。飛雄さんとお付き合いさせて頂いています。本日はお忙しい中、お時間を取って頂きありがとうございます」
「どうぞ〜、外寒かったでしょ?入って入って」
「ありがとうございます、失礼します!」

飛雄くんのお姉さんは東京に居てるそうで、今日はお母様とお父様が出迎えてくれる。用意されていたスリッパを履き、生きた心地がしないままリビングに通される。

「飛雄さんから好きと伺いまして、よければ召し上がってください」
「東京バナナ好きなのよ〜、名前さんありがとう」
「とんでもないです」

席についてから出されたお茶を少し飲んで落ち着いた気がするが、依然頭の中は軽くパニック状態だった。飛雄くんがテーブルの下で手を握ってくれ、目を合わせる。

「電話でも話したと思うけど、名前さんと結婚する。そんで来月から一緒に住むから」
「せっかくの家族団欒のところ本日はお時間作って頂きありがとうございます。飛雄さんとは、以前から真剣にお付き合いをさせていただいておりまして、飛雄さんのお父様、お母様に結婚のお許しを頂きたいと思い、本日お伺いしました」

あまりにもあっさりした飛雄くんの話にドキドキしながら、練習してきた挨拶を心を込めて伝える。

「わたしにとって飛雄さんはかけがえのない大切な人です。至らない私ですが、これから飛雄さんと一緒に温かい家庭を築いていきたいと思っています。また、飛雄さんのバレーを支えたく今もアスリートフードマイスターの資格取得に向けて勉強させて頂いております。飛雄さんのお父様、お母様とも末永くお付き合いさせていただけると有難いです。どうぞよろしくお願いいたします」

そう頭を下げると、飛雄くんのお父様とお母様は少し困ったように微笑んでいた。

「名前さん、知っての通り飛雄はバレー以外は世間知らずのまだ子供です。今名前さんのご挨拶を聞いて感じたけれど、名前さんは自立されてる大人の女性だと思います。本当に飛雄でいいんでしょうか?」
「母さん、何言って」
「飛雄は黙ってなさい」

お父様が飛雄くんのことを制する。お母様の言いたいことはわかる。決してわたしたちのことを否定しているわけではなく、ただ親として飛雄くんのことがまだ心配なんだと感じた。

「はい、わたしはもう飛雄さんのいない人生は考えられません。年もわたしの方が上ですし、飛雄さんのことを生涯支えたいと言う気持ちは本気です。何よりわたしが誰よりも飛雄さんのバレーが好きなので、近くでサポートさせてもらいたいと思ってます」
「飛雄は、名前さんの人生を背負って幸せにするって言い切れるのか?」
「ああ」

お父様が静かに飛雄くんに問う。飛雄くんは繋いでる手をぎゅ、っと握ってくれる。

「名前さんのおかげで、俺はこれからもバレーに集中できると思う。名前さんを幸せにするのは当たり前だけど、俺が名前さんといると幸せになれんだよ」
「名前さん」
「は、はい!」
「正直言って、飛雄のことは心配してないの。あなたが素敵な女性というのは初対面ですけどすごく分かります。だからこそ名前さん、あなたのことが心配なの。何度も申し訳ないけど、本当に飛雄でいいの?」
「はい、飛雄さんと結婚させて頂きたいです。わたしの人生から飛雄さんが居なくなることは考えられません」

飛雄くんのお母様の目を見てはっきりとそう告げると、飛雄くんが「名前さん...」と嬉しそうに見つめてくる。

「お父さんから、何かある?」
「ないよ。名前さん、まだまだ子供だが飛雄のことよろしくお願いします」
「私からも、飛雄のことよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」と頭を下げてどうやら結婚のお許しを頂けたようだった。ほっとしたのも束の間飛雄くんのお母様から今日は泊まって行ったら?と提案をされ断るのに一苦労だった。飛雄くんの押しの強さはもしかすると、お母様譲りなのかもしれない。
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