影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




飛雄くんの話を聞きながら、わたしも当時のことを思い出す。

「前も言ったと思うんすけど、名前さんはずっと日向のファンだって思い込んでたんで」
「うん、言ってたね」
「多分ずっと、ずりぃって思ってた。あんなに夢中になって応援してもらえる日向が羨ましかったんす」

そうぽつり、ぽつりと話しながら飛雄くんは恥ずかしそうに顔を赤らめていた。ずっと飛雄くんがなぜそこまでわたしのことを好きだと言ってくれてるのか、好きな気持ちに嘘偽りがない事はわかっていたけど理由がわからず、困惑する事は多々あった。

「春高優勝したら、あの人は笑ってくれんのか。って考えたら今まで勝つためだけにプレーすることしか考えてなかったけど応援してくれてる人のために頑張りてぇって初めて思ったんす」
「うん、」
「だからこそ最後、春高で優勝出来なくてすげぇ悔しかった。でも名前さん、あん時笑ってたんすよね」

最後の春高、よく覚えてる。はじめてセンターコートに立つ飛雄くんを生で見れて、正直勝敗よりここまで来れたことが本当に嬉しくて。試合が終わっても飛雄くんが春からVリーグに行くって知って。春からはもっとたくさん、もっと近くで飛雄くんの試合見れるんだって思ったら嬉しくて笑っていた気がする。涙で視界がぼやけるより、最後になるであろう烏野の飛雄くんの姿を目に焼き付けたかった。

そこまで話すと飛雄くんは手を合わせて「ご馳走様でした」と食器を台所に片付けてくれる。わたしも急いで食器を片付け、飛雄くんが座っているソファに腰掛けた。飛雄くんはわたしの右手を取りぎゅっと握りながら先程の話の続きをしてくれる。

「もう、会う事は今後一生ないってわかってたんです。本当は話しかけたかった。今までありがとうございましたって。例え日向目当てでも俺は、あなたの姿を探すのが楽しみになってたって」

力が込められる右手の上にわたしも左手を乗せる。

「でもあの日、名前さんバカみてぇに嬉しそうな顔して試合見てて」
「ちょっと、」
「褒めてます。今まで俺が欲しがってたこの人からの応援は、俺がずっともらってたもんだって気づいたんす」
「わたし初対面で舞い上がって飛雄くんにすごいテンション高く話しかけた記憶あるよ」
「ハイ、嬉しかったです。すげー、可愛かった」

横から飛雄くんに抱き寄せられ、体を飛雄くんに預ける。

「そんで名前さんが俺のために怒ってくれて、一緒に帰った時、すげぇ嬉しくて。絶対俺のもんにしたいって思った」
「恥ずかしい、んですけども」
「聞けよ、ちゃんと」

うん、と返事をし飛雄くんの体に体重をかける。

「そしたら名前さんと両思いで付き合ってると思ってたの俺だけだし、ちゃんと言ったら言ったで名前さんなかったことにしようとするし」
「う、その節は、ごめんなさい」
「付き合ったら付き合ったで、キスしようとしたら避けるし」
「う、」
「名前さんからキスして煽って来たくせに成人するまでしねぇとか酷過ぎんだろ。でも、」

と言って飛雄くんはわたしの顎を持ち優しくキスを、そのまま指が耳元に滑るように動き、角度を変えながら何度もキスをされる。ああ、幸せだと思って目を開けると飛雄くんと目が合う。

「今はもう全部。全部、俺のなんでいいです」

頬に伝う涙、それすらも俺のだと言わんばかりに飛雄くんが唇を寄せて舐めてくる。昨日からわたしは飛雄くんに愛されてばかりで、本当にこの世で1番幸せなんだと思う。 
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