影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「で、名前さんは式はいつぐらいがいいすか?」
「ん?何の話?」

かなり遅めの朝ごはんを食べながら、飛雄くんの突拍子もない発言にむせてしまう。ごほごほと咳を繰り返してると目の前の飛雄くんが水を差し出してくれる。

「?俺らの結婚式ですけど」
「え?結婚、?誰と、誰が?」
「俺と、名前さん」

きょとん、とした顔でこちらを見てる飛雄くんが冗談を言ってるようには思えないがわたしとしては心当たりがなさ過ぎて冗談であってほしいと願うばかりだった。

「待って、同棲はするよ?結婚は、その」
「俺は名前さん以外と結婚するつもりないんすけど」
「え、あ、いや、飛雄くん20歳なったばかりだし、ね?」
「だって名前さん、彼女のうちはどこもデート行ってくれそうにねぇし、それなら結婚したら堂々と一緒に外、歩けますよね」
「、、、?」
「何でそんなアホ面してんすか。襲いますよ」
「か、会社の許可は?」
「もう取ってますけど」

もぐもぐと大きな口で目の前のご飯を食べていく飛雄くんがさも当たり前かのように告げてくる。この人一体いつから、というよりどこからどこまで考えてと脳内で考えていると飛雄くんが箸を置き真面目な顔で見てくる。

「俺は、名前さんと結婚するつもりで最初から付き合ってますし、遅かれ早かれするなら早く結婚して俺のものにしてぇ。結婚してれば俺がどこでプレーすることになっても名前さんのこと連れて行けるし危なくないです。それに堂々と俺の試合見れますよ。だから俺と結婚してください」
「はい、」

飛雄くんのまっすぐな眼差しにわたしは考えるより先に返事をしていて自分でも驚いた。昔から真面目で慎重で、危ない橋は叩いても渡らないくらいの性格のわたしがこんなにも自分の気持ちに素直になれたことはあっただろうか。それくらい、飛雄くんの言葉はまっすぐで真摯で。愛を感じた。

「プロポーズはなんかそれっぽいとこ連れて行くんで、それまでに返事変えんなよ」
「それっぽいとこってどこ?」

思わず笑ってしまい、飛雄くんがムッとするのがわかった。でもあまりにも振り回され続けてるのでこれくらい許してほしい。まだ面白くてくすくす笑ってると飛雄くんが不機嫌そうにぼそりと呟いた。

「名前さん、ちゃんと俺と結婚するってわかってんのか?寝ぼけてねぇ?」
「いや、それ多分わたしの台詞だよ...」
「俺は名前さんがいいって言ってる」
「そもそも、ずっと気になってたんだけど」

そこまで言い出して、つい口を閉ざしてしまった。もごもごと何と切り出そうか考えていると飛雄くんの方が先に話し出す。

「最初は多分高2のインハイ予選決勝で負けた時」
「、え?」
「応援席で見たことねぇ女の人が号泣してるのが気になって。そんで、そん年の春高予選の決勝でも俺らが勝っても泣いてて。この人何したら笑ってくれんだって思ってました」

わたしは鈍器で頭を殴られたような衝撃で、なんならプロポーズされたことよりも今の方が衝撃的だった。なんて、飛雄くんには怖くて言えない。
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