影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




帰ってからわたしは飛雄くんに連絡をしようと思いながらももう1時間ほどが過ぎていた。話したいことがある、時間を作って欲しい、会いたい、など書いては消しを繰り返していた。

「うーーーーーーーん」

なんて、説明したらいいんだろう。そこがまだ定まっておらず飛雄くんに連絡をする決め手に欠けていた。あまり堅苦しくしすぎると、飛雄くんのことだから別れ話と勘違いしかねない。でもフランクに連絡を取ってしまうと、久しぶりに会う飛雄くんのパワーに圧倒されてまともに話ができる気がしない。
何度目かのため息をつきながらコーヒーに手を伸ばすと友人から電話がかかってきた。

「もしもし?」
「名前ちゃん!!生きてる!?見た?!」
「え、生きてるよ」
「見てないか〜〜〜」
「何?何の話?」
「掲示板荒れてるんだよね、名前ちゃんと影山くんの話で」

えっ、と声を上げるより早くスマホを落としてしまう。今までも何度か書き込みをされたことはあったが、友人がわざわざ電話してくるということは相当なことになってるんだろう。まさかとは思うけど、付き合ってることがばれた?いや、それならこんな回りくどい言い方してこない。

「何て、書かれてる?」
「あ〜ウン。今日のやつ名前ちゃんが列割り込んで最初に話したことにされてて、ファンサのこともバレてるわ」
「あ〜〜〜〜〜、なるほど...」
「今までは名前ちゃんにって気付いてる人の方がいなかったけど、わざわざご丁寧に解説まで書いてる人いてさぁ...」
「ああ、なるほど、」
「大丈夫?」

ああ、結局飛雄くんの足を引っ張ってしまったな。そう思うと溢れる涙を抑えることができなかった。

「、だい、じょぶ」
「悔しいよね。名前ちゃんが今までどんだけ影山くん応援してきたか知らない奴らに好き勝手言われてさ。本当にむかつく」
「優しさが沁みる...でもわたしも、そろそろかなって思ってて」
「影山くんのファン?!やめるの?!」
「ファンは一生辞めないけど、もう見るだけで充分かなって。一生分の幸せは影山くんからもう貰ったから、欲張りすぎてたなって」

そう一気に言い切ると、友人も一緒にため息をついてくれる。こんなにも、こんなにもわたしのことを考えてくれている人にわたしは今嘘をついてるし騙してる。その事実も、辛かった。わたしはまだ飛雄くんと付き合うってどういことかちゃんと理解できてなかったし、こんなにも人様に後ろめたい気持ちになるってわかってなかった。ただ、好きになってしまっただけなのに、そう言えたら簡単だし楽だけど、そんな風に突っ走れるほど若くない。

「わたしもね、実はそろそろ実家戻らなきゃいけなくて」
「え、そうなの?!」
「実家がさ、病院やってんだけどそろそろ帰んなきゃ親がうるさいんだよね〜」

お互い潮時じゃんね!と笑って明るく言ってくれる彼女の明るさにわたしはかなり救われたと思う。その後はあの頃は楽しかったね、面白かったよねと2人で散々思い出話を繰り返して夜は更けていった。

飛雄くんから怒涛の不在着信が入っていたことには、この時まだ気づいていませんでした。

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