影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




試合終了のホイッスルが鳴り、今日も無事アドラーズの勝利で試合を収めた。
わたしはもう試合中顔面がぐっちゃぐちゃになるほど感極まって泣いてしまっていた。

「うーーーーー、影山くんがかっこいい...好き...」
「今日の影山くん凄かったね、サーブもトスもまじキレッキレ」
「影山くんを産んでくださったお母様ありがとうございます」

仙台ってどっち向きだ?とアホな会話をしながら手を合わせる。自分から飛雄くんと約束しておいて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど、今日だけはただのファンとして心のままに行動することを許して頂きたい。後でいっぱい謝る。

顔面が事故すぎて、化粧を直してから飛雄くんの列に向かうとすでにファンの方々で賑わっていた。あまりの多さに恐れ慄いていると先頭の方の飛雄くんファンに声をかけられる。

「名前さん!」
「は、はい!」

話したこともない、見たことがあるだけの飛雄くんのファン。わたしが見にきてる試合に大体いるという認識なので、多分わたしと同じくらい見にきてる人だ。あまり飛雄くんのファンの方と話す機会が無く、名前を知ってもらっていたことに驚きながらも呼ばれた先へと向かった。

「あの、よかったら最初に話しませんか?」
「え、ええ?!」
「影山選手、名前さんと話した後だとファンの子多くても最後まで機嫌良いこと多いんです」
「ええ?!そんなこと、ないと思いますよ?」
「いや!あります!最近名前さんあまりお話されてないじゃないですか?やっぱり名前さんと話された後の方が全体的にマイルドなんです!」

まさかそんな話をされると思っておらず、わたしは驚いて何も返事ができなかった。

「私、名前さんと影山選手のお二人がすごく好きで...」
「えっ、?」
「名前さんが古参なのは有名な話ですけど、影山選手にとってもやっぱり名前さんは大事なファンなんだと思うんです!」
「ちょ、ちょっと声が...大きいような...」
「なので、先に話してください!」

飛雄くんのファンは飛雄くんに似て話を聞いてくれない人が多いのか?なんて失礼なことを考えていると、飛雄くんがこちらに向かってきているのが見えた。「さあ、どうぞ!」と列の先頭を半ば強引に譲られ、申し訳なさそうに列に入ると周りのファンの方々も特に怒っているような反応はなく安心する。「あの人が?」「らしい、古参だって」「オキニってこと?」「そうなんじゃない?」と、色んな声が聞こえてくるけどそこまで否定的な言葉が聞こえず安心した。

「名前、サン!」

(あー、わかった、飛雄くんが悪い)

この顔、わたしでもわかる。わたしのこと好きだって顔に書いてある。約3ヶ月ぶりに会う飛雄くん、わたしだって嬉しいけど飛雄くんからの嬉しい、好きパワーに圧倒される。

「今日もお疲れ様でした!そして、おめでとうございます!リオでの活躍も素晴らしかったです!影山選手のプレーを今日生で見れて本当に嬉しくて、幸せでした」
「あ、ざっす」

その後も伝えたいことだけを早口で話し、ここまま飛雄くんの前にいるのは得策ではないと感じ早々に退散しようとする。が、飛雄くんがそんなこと許してくれるわけもなく握手とは言い切れないレベルで手をずっと握ってくる。大きい手で包まれたわたしの手は完全に自由を無くし、飛雄くんの親指が手の甲を撫でるたびにくすぐったい。

「俺も今日、名前さんに生で試合見てもらえて嬉しかったす」

これ以上そんな目で見られたらわたしの体に穴が開きそうだし、飛雄くんからの熱で溶けて無くなりそう。後ろの飛雄くんのファンの方々がざわざわし出してさすがにまずい、と思い強引に手を振り解き「また来ます」と立ち去る。わたしが我慢すればよかった、飛雄くんごめんね。そんな気持ちでいっぱいだけど早く、早く飛雄くんのことお疲れ様って抱きしめてあげたいな、2人になりたい。そんなことを思ってしまった。もうわたし、ファンでいる資格が、ないのかもしれない。
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