影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




とっても可愛い花瓶が届き、飛雄くんからもらったお花を飾ると抜群に可愛い部屋になった。のも遠い昔に感じる。あのお花は今ドライフラワーになり、部屋の壁に飾ってある。時が経つのは早いものだ。

(そして!今日は!飛雄くんが!帰って!来る!日!だっ!)

来る日も来る日も飛雄くんの録画を擦り切れるほど見たけど、生の飛雄くんのプレーに勝るものはこの世のどこにもない。帰国自体はもっと前からしているし、連絡も取ってはいたけどさすがのJAPANは帰国してからも取材にテレビに大忙しだったようで一息つくまもなくアドラーズに戻って今日帰国初試合だ。

わたしはチケット戦争になんとか勝ち、といっても友人のツテでなんとかチケットを手に入れ参戦する。最初チケット取れなかった時は飛雄くんと電話しながら泣いてしまった。慌てふためく飛雄くんに「チケット用意します」と言われ気を使わせてしまったショックでわたしの涙は一瞬で引っ込んだ。そんなこともありながら、なんとか、本当に何とか今日の試合を見ることができる。

「当たり前に飛雄くんのバレーが生で見れるって思っちゃダメだよね」
「でたでた、なんか名前ちゃんがめんどくさいスイッチ入ってるよ〜」
「名前ちゃんって、本当喋ったら残念だよね」
「だって!!プロになってからこんなに長いこと生で試合見れなかったのはじめてなんだもん...」

飛雄くんが出てないアドラーズの試合を申し訳ないとは思いつつも見に行くことはなく、友人たちにも久しぶりに会ってテンションが上がってしまうのは仕方ない。
リオオリンピックの興奮さながら、わたしは友人たちの優しさに甘えてリオの飛雄くんのスーパープレイを選手達が出てくるまで永遠に語っていた。持つべきものはオタクの友達。これ絶対。

「あ、出てきた!」

と友人が騒ぐと会場は既に盛り上がっており飛雄くん、牛島選手など主にオリンピックに出ていた選手への声援が凄かった。牛島選手は声援に真顔で手を振って答えたりしていたが、飛雄くんはどこ吹く風でアップを始めている。あ、あの顔はちょっと照れてる時の顔だな、なんて思ってしまい反省をする。

(今、ここにいるのは飛雄くんの彼女としてじゃなくて影山選手のファンとしてだから。調子乗ったこと考えてんじゃない、バカ)

アップをしてる姿すら美しいと思えてしまい、今日もわたしは生きてて良かったなと思える。はぁ、とため息をつきながら飛雄くんを見つめていると友人から話を振られる。

「でもさあ、影山くん前は名前ちゃんのことすぐ見つけて手なんか振ったりしてさあ?可愛げあったのに。JAPANに選ばれた途端放ったらかしなの許せないんだけど」
「ええ、そんなことないよ...勝手に見させてもらってるんだし全然にいいよ...」
「名前ちゃんは欲なさ過ぎ!わたしなんか若利くんに気付いて欲しくてチケット死ぬ気でとってんのに」

欲がない、という訳でもないし、友人を騙したい気持ちがある訳でもない。ましてや優位に立ってるつもりもないし、ただ一緒にバレーを見て騒ぎたいだけ。こういう時にふと色々良くないことが脳内に浮かんでしまい、少し落ち込んでしまう。
が、今日のわたしは飛雄くんのプレーを見るために会場に来たし、今日まで生きてきたので落ち込んでいる暇はないのである!切り替え!

さあ、飛雄くんのサーブから試合開始だ!もうすでに心臓が壊れそうなくらい、耳から心臓が出そうなくらい興奮している。とりあえず、興奮している。この瞬間の為に今まで生きてきたと言っても過言ではない。ドキドキと高鳴る胸を抱えながら手汗でびしょびしょの手を顔の前で合わせる。
ピーッ、とホイッスルが鳴り飛雄くんはサーブトスの前こちらに体を向け、指を指す。

「ちょ、!名前ちゃん!生きてる?!」

会場は最高に盛り上がりを見せ飛雄くんのサービスエースから試合がスタートした。わたしは飛雄くんに何度恋したらいいんだろう。ぐちゃぐちゃな感情が頬に涙を伝す。

「し、死ぬ。かっ、かっこよすぎて、死ぬ」

(今日ばかりは、ただ、ただ喜んでもいいですか?)

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