影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




自宅にどんどん増えていく影山くんの雑誌、チームのタオルに応援グッズ。そして段々と様になってきた影山くん直筆のサイン色紙。家にいるだけで幸せになるくらいわたしの生活は今日も変わらず影山くん中心で回っていた。
職場の楽しくない生産性のない飲み会も、上司に対する愚痴も全て影山くんのプレーを見るとどうでも良くなるし今日も影山くんがどこかでバレーをしてる、そのことがわたしの生きる糧になっていた。



「今日もお疲れ様でした。最後のセット鳥肌止まらなくてずっと感動しっ放しでした…今日も見に来れて良かったです。影山選手が1番かっこよかったです」
「アザス。名字サン今日いつもと違う場所居てたんで最初居ないかと思いました」



わかってる、ちゃんと、わかってる。影山くんと何度か会話をしてわかったことがあるけど、彼はこういうファンが喜ぶ言葉をさらっと言ってのけることが多々あった。
わたしは年上だし、影山くんのファンサービスの一環だということを頭では理解していても表情筋はいうことを聞いてくれずゆるっゆるの顔を何度か影山くんに見られている。



「あっ、そう。今回チケット取るのちょっと遅くて一般で見てたんですよ」
「でもその後すぐ見つけたんで大丈夫っス。サーブん時に見えました」
「今日も影山選手のサーブきれっきれで格好良かったです!」



興奮のあまり握手の手に少し力が入ってしまった。それにしても今日のサーブはどれもキレキレで見てるこっちが吹っ飛んでしまいそうだった。会場に響き渡るサービスエースの音もまだ脳内に残っているし影山くんのガッツポーズ姿もちゃんと脳内に記憶している。

(そういえば今日サーブ打つ前にいつもと違うことしてて驚いたな。)

影山くんもあんな王道ファンサービスするんだなあ、と思い出し脳内再生していた。

ふと目の前の影山くんに目をやると何とも言えない表情で、何かを伝えようと脳内を働かせているようだった。こういう時の影山くんは何かを言ってくれるまで話が通じないのでぐっと待つことにしている。後ろちょっとつっかえて来たからこれ聞いたらすぐ退かないと、と考えていると影山くんがいつもより覇気のない小さな声で話し出した。



「ーっスか?」
「え?ごめんなさい、聞こえな、」
「サーブん時!気づきましたか!?」
「え、?」
「俺、名字サンに今からサービスエース取るって宣言したつもり、だった、んスけど、デス」
「あっ、えっ!?あれって、あの時?!の、あっ、えっ」
「次もやるんで、ちゃんと見ててください」



わたしは困惑したまま影山くんにペコっと頭を下げてその場から離れた。ちょっと言われてる意味がよくわからないです。試合中に?影山くんが?わたしに?サービスエースを?取ると?宣言を?した?ーないナイナイ、オタク都合よく脳内で推しの言葉変換しすぎ。危ない危ない、痛いオタクになるところだった。

どう考えても都合の良すぎる会話に、わたしは全部自分の妄想だったということで話が落ち着いた。そうでなければ格好良すぎて心臓持たないし、多分わたしは死ぬ。いやでも影山くんのプレー見ながら死ねるなら本望なのか?いや、影山くんが世界で1番になるまで死ねない。よし、今日も生きよう。

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