影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




飛雄くんがトイレに居てる間、わたしは乱れた髪と服を直し精神を落ち着けていた。思い返すとまた精神がすぐ乱れそうなほど飛雄くんの色気はとてつもなく、また気持ちがそわそわしてきた。このままではダメだ、と立ち上がり花束を拾いに玄関の方へ向かう。

花束を手に取り、飛雄くんの言葉を思い出してまた嬉しくて頬が緩んでしまう。とりあえず応急処置で空いてるお酒の瓶にお花を入れる。花瓶がないので、ソファに座りながら通販サイトで花瓶を探していると飛雄くんがトイレから気まずそうに出てくる。わたしも気まずさが伝染して、しばらく飛雄くんのことを直視できずにいた。多分わたしより飛雄くんの方が恥ずかしいし、気まずいよね。そう思い、とんとんと自分の横を叩き「座る?」と声をかける。

「っす」
「今ね、お花に合いそうな花瓶買おうと思って選んでたの」
「飾るんすか?」
「うん!このお花とっても可愛いし、嬉しかったからできるだけ長く飾るよ」
「枯れたら、また買ってきます」

ありがとう、と声にする前に飛雄くんが横から抱きしめてくるので驚いて声が出なかった。スマホをテーブルの上に置き飛雄くんの胸にそのまま体を預ける。飛雄くんの心臓の音が心地よくて、このままうとうと寝てしまいそうだった。あ、今何時?そろそろ飛雄くん帰ってもらわないと。

「飛雄くん、時間いいの?」
「あとちょっとだけ」

飛雄くんの方を見上げると、唇が重なる。

「ん、わかった」
「俺、名前さんのこと勘違いしてて、暴走して、その、すいませんでした」
「どういうこと?」
「名前さんがキスしたりしてくんねぇのは、俺と嫌々付き合ってるからだと思ってて、名前さんからキスしてもらえてすげぇ嬉しくて、その」

あまりにも可愛い言葉にわたしの体中が飛雄くんにときめいてしまった。飛雄くん、普段はクールな見た目で落ち着いて見えるのに実際はそんなことなくてわがままだし、言っても聞いてくれないことあるし、自分がこうって決めたら何がなんでも押し通してくるし。それでいて臆病なとこもあって、この期に及んでわたしが飛雄くんのこと好きじゃないとかそんな選択肢あったんだと面白くなってしまった。

飛雄くんの両頬に手を添えて触れるだけのキスをする。

「好きだよ、飛雄くんのこと大好き」

飛雄くんは不意打ちを予想していなかったのか顔を真っ赤にして、目をぱちぱちと瞬きしている。

「ぜってぇ、俺の方が好きだ」

恥ずかしそうにそう言ってきてくれた飛雄くんはどこからどう見ても年相応のただの男の子で。ああ、好きだなあ。わたしこれから飛雄くん無しで人生歩んでいけるのかな。もう離れたいって言われても離してあげれないかもしれない。そんなことを思いながら飛雄くんのことを力一杯抱きしめた。せめてこの気持ちが全部伝わらなくても、飛雄くんの不安がなくなりますように。
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