影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




飛雄くんを迎え入れようと玄関の扉を開けると、そこには真っ青な花束を持った王子様が立っていました。格好良すぎて貧血起こしそう。

「な!な、なな!」

わたしがあまりにも驚いて言葉を発せずにいると、飛雄くんは「驚いたすか?」とにやりと笑いながら後ろ手に扉を閉める。
そこまま飛雄くんはわたしに花束を差し出して、恥ずかしそうに片膝をついた。待って、そこそんなに綺麗じゃないから立って欲しい。

「名前さん、俺と付き合ってくれてありがとうございます」
「え、あ、う」
「俺からほぼ無理やり付き合ってもらってるよーなもんすけど、1ヶ月経ってやっぱり俺は名前さんのことすげぇ好きになったし、これからも一緒にいてぇ」

返事をしたくても、突然のことに目頭がキュウと熱くなって言葉が出ない。今言葉を発したら確実に泣いてしまいそうだった。

「だから、俺は名前さんと離れるつもりなんてねぇし、寂しい思いこれからいっぱいさせるけど一緒にいてください。好きです」

そう言い切った飛雄くんは、格好いいセリフの割に表情がとても不安そうで。わたしは自分の頬に涙が伝うのがわかり、余計に涙が込み上げてきた。わたしがいきなり泣き出したもんだから、目の前の飛雄くんは慌てて立ち上がる。せっかくの花束が落ちる音が聞こえたけどもう何も見えない。飛雄くんにぎゅう、と抱きしめられていた。

「俺、探すなって言われても名前さんのことやっぱ探しちまうし、ファンサもしてぇけど、それで名前さんの立場が悪くなんのは俺も嫌っす。でもやっぱ試合終わって名前さんがお疲れ様って前みたいに話してくんねぇのも嫌。わがまま言ってんのはわかってんすけど、俺もどうすれば良かったのかってずっと考えてた」

そっか、わたしだけじゃなかったんだ。飛雄くんもいっぱい考えてくれてたんだ。そう思うと最近ずっと悩んでたことが嘘みたいに心が晴れていく。

「俺、やっぱり、こんなの名前さんのこと縛り付けてるだけってわかってるんすけど。それでも、ファンじゃもう満足できねぇ。名前さんは俺の彼女じゃなきゃ嫌だ」

わたしも好きだよ、そう言ってあげたいのに次々込み上げてくる涙がわたしの声を奪ってそのまま飛雄くんが心配そうに話を続ける。

「何でこんなに名前さんのこと好きになったのか、わかんねぇし上手く言えねぇ。けど俺は、名前さんのこと離したくねぇ」
「と、飛雄くん!」
「っす」

抱きしめられていた力が弱まり、飛雄くんの顔を見ると迷子の子供の様な顔をしていた。ふとTシャツに目を移すとわたしの涙で濡れていて、申し訳ない気持ちになる。
ふぅ、と深呼吸をして飛雄くんの目を下から見つめる。

「わたしもずっと同じこと考えてたよ。他のファンの子いいな、とか。あのまま付き合ってなかったら何も考えずにただのファンでいられたのに、とか」
「...っす」
「でもね、もうわたし影山選手じゃない、飛雄くんのこと知っちゃった。それで、好きになっちゃった。だから、いいの。飛雄くんが手放すその瞬間までわたしは飛雄くんのものでいるし、一緒にいたい。飛雄くんのこと、好き、だから」

ああ、飛雄くんのお母様申し訳ありません。でも、わたし飛雄くんのこと絶対に幸せにします。
心の中で飛雄くんのお母様に謝罪をし、勢いよく飛雄くんの首に手を回してぐっと背伸びをして唇にキスをした。ごめんなさい。とうとうやってしまった。
だってあんな捨てられた子犬みたいな顔してる飛雄くんが悪い。可愛すぎる、反則。
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