影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




ピンポーン

この音が聞こえるまで生きた心地がしないと思っていたが、今が一番死んでしまいそうだった。
恐る恐るインターホンに出ると帽子を深く被った影山くんが映っている。名前を出されて周りの人に聞かれるのも困るので無言でお願いしたのはわたしだが、実際無言で立たれるのは少し怖かった。

もう一度インターホンがなる。
どうしよう、本当に影山くんが家に来てしまった。ドアを開ける前に最終チェックを玄関前の鏡で瞬時に行う。いやもうなるようにしかならない!えーい!と、ドアを勢いに任せて開けると影山くんの靴が見えた。ゆっくりと目線を上にあげると帽子の鍔を深く被り少し緊張した面持ちの影山くんがいた。

「よ、ようこそ」
「っス」

あまりドアの前に居てもらうのも申し訳ないので、影山くんを招き入れる。影山くんは無言のまま靴を脱ぎ、揃えて部屋に上がる。綺麗に揃った靴を見ながらわたしは影山家の教育が行き届いてることに感動して会ったこともない影山くんのお母様に尊敬を覚えた。
感動しながら影山くんの背中を見ていると、廊下で急に立ち止まった影山くんの背中に思わずぶつかってしまう。

「痛っ、あ、ごめんなさい」

おでこをコツンとぶつけてしまい、思わず驚きで心臓が飛び出しそうだった。影山くんの背中にぶつかってしまった。返事がないので「影山くん?」と呼びかけると、ぐるっと影山くんの体がこちらを向きぐっと距離を詰められた。驚いて思わず一歩下がると反対に一歩、距離を詰められる。
お互い無言のまま後退していくと、背中は玄関に当たってしまう。

(何?!影山くん顔めっちゃ怖いんだけど何?!?)

何か言葉を発さなければと思い、声を出そうとすると正面から力一杯抱きしめられる。あの、影山くん、昨日も思ったけど力加減が、いやそんなこと言ってる場合ではない。

「会いたかった、デス」
「え、」
「今は2人だから、こういうことしていいんすよね?」

可愛すぎでは?????????と脳内のもう1人の自分は大騒ぎしてるが、今は年上の女性として落ち着いた態度で接さなければ。
心臓が飛び出そうなぐらい音を立てているが出来るだけ平常心を装って話し掛ける。

「とりあえず部屋行きましょう、ソファ使ってください」

そう言うと、影山くんは「っス」と返事をしわたしの手を引きながらリビングへと向かって行った。もうすでに今日の体力を使い果たした気がするんですが、わたしこの後ちゃんと話し合いできるか不安です。
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