影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「だから、今みたいに誰かに見つかりそうな時はこういうことはしません」

肩に乗っている影山くんの手をトントン、と叩くと大人しく手を降ろしてくれる。

「いつまで、すか」
「うーん。そこまでは考えてなかったです」
「でも俺、名前さんの彼氏でいいんすよね?」
「はい、よろしくお願いします」

ぺこ、と頭を下げると影山くんも頭を下げる。その後は影山くんと連絡先の交換をして、この関係はひとまずわたしに何かあったら困るので口外禁止。つまり、2人だけの秘密。

というのは影山くん向けの理由で、わたしとしてもこのまま好意をどこでもかしこでも開けっ広げに向けられるのは正直困る。影山くんがその所為で悪い噂が立っても困るし、変な記事にされても困る。だから、影山くんにひとまず落ち着いて欲しくて提案をした。大人ってずるくてごめんね。

もちろん影山くんのことは好きだけど、それよりも影山くんのバレー人生にとってわたしが汚点になってしまうことが怖かった。影山くんもまだ若いし、きっと女の子との出会いもそこまでしてきてない。だから、影山くんが現実に気付くまでそれまでの束の間の恋人ごっこを全うすることに決めた。

(わたしなら、もう一生分の幸せもらったから大丈夫)

烏養さんの車で駅まで送ってもらい、駅のホームで新幹線のチケットを買う。今回烏養さんには感謝してもしきれないほど感謝している。何だが色々勘づいている様子だったけど、何も言われなくてまた感謝した。

「新幹線、隣の席でいいすよね?」
「影山くん。わたしの話ちゃんと聞いてました?」

影山くんはどうやらちょっとおバカさんかも知れない。問答無用で違う車両の新幹線のチケットを買い、新幹線に乗ってる間はメールで連絡を取ることで押し通した。

新幹線の席に座ると、だいぶ気を張っていたのか思わず「ふぅ」とため息が出る。これから先のことを考えると正直自分の選んだ選択が合ってるのか不安になる。それでも、やっぱり影山くんの嬉しそうな顔を見てると絆されてしまう。だって可愛いんだもん。

テーブルの上のスマホが鳴り、影山くんからのメールを受信する。

「東京着いたら飯行きませんか」
「外食はダメです」
「じゃあ、名前さんち行っていいすか」
「今日はダメです」
「明日は?カレー食いたい」
「わかりました、じゃあ明日」
「温玉も乗せてください」
「温玉好きなの?わかりました」
「好きっす!」
「明日、ちゃんと帽子被って来てくださいね」
「了解しました」

ああ、わたしこんな幸せでいいのかな。その後何通かメールのやりとりをして、家まで送ると言って聞かない影山くんを必死に止めて無事に1人で帰宅した。何だかまだ信じられないことが起きすぎて、ふわふわしてる。

明日は影山くんと色々話し合いしなきゃな、と思いながら久しぶりの自分のベッドで安心したのかすぐ眠りについてしまった。眠る直前、電話が鳴ってる気がしたけど眠気には勝てずそのまま寝てしまう。影山くん、おやすみなさい。 

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