影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




練習試合は思ったより早く終わってしまい、町内会のメンバーの皆さんは仕事の合間の方もいたようでバラバラに解散していく。
影山くんは烏養さんと一緒に現役の生徒達にアドバイスなどをしているようで、わたしは邪魔にならない範囲で片付けを下級生達と行っていた。

こっちに来たときはもう影山くんのバレー姿を見れないかもしれないってずっと悲しくて落ち込んでたけど、こうやってまさか烏野の体育館でバレーをしてる影山くんの姿が見れるなんて。わたしはもう夢を見ている気分だった。

体育館のモップがけを終え、モップを片付けに少し薄暗い倉庫の中に入る。ここも、影山くんが使ってたんだろうなあ。そんなことを考えながら倉庫の奥に入り、モップを片付けていく。
ガタ、と扉が閉まる音が聞こえて振り返ろうとしたが、振り返る前に誰かに後ろから抱き締められた。誰か、なんて聞かなくても1人しかいない。

「か、影山選手」

影山くんとわたしの身長差で抱きしめられると、すっぽりと包まれてしまい本当に身動きが取れない。心臓爆発してないかな。そんなことを考える余裕まである自分に少し驚いてしまった。だって、背中越しに伝わってくる影山くんの心臓の音が凄すぎて。

ー多分わたしより影山くんの方がドキドキしてる。

そう気づいた瞬間、今まで自分では気づいていなかった、薄々気づいていたけど気づかなかったふりをしていた感情が身体中を駆け巡る。影山くんのことが、愛おしくて堪らない。
後ろにいる影山くんは何も言わない。その代わり抱きしめてくる力がどんどん強くなってきて、思わず「苦しい」と声を出してしまった。「すいません」と消え入るような声で謝ってくる影山くんに思わず笑みが溢れる。抱きしめられている腕にそっと手を添えると、影山くんの体が驚いたのかビクッと反応する。

「誰か来たら、」
「無かったことにしようとしてますよね」
「え?」
「名前さん、これで東京帰ったら昨日のこと、無かったことにしますよね」

影山くんが言いたいことは、わかっている。し、ついさっきまでは実際そうするつもりだった。「影山くん」と呼びかけるとぎゅう、とまた強く抱きしめられる。これ以上可愛いことしてくるの辞めてほしい。可愛すぎて頭がパンクしそうだった。

「俺、ちゃんと名前さんのこと知りたいっす」
「うん」
「ちゃんと知って、名前さんのこと全部好きになりたい」
「うん」
「俺と付き合ってください」

影山くんは淡々と話してるけど、声が震えてる。わたしは思わず涙が溢れてしまい、肩を揺らしてしまった。わたしが泣いていることに気づいた影山くんが慌てて抱きしめていた腕を解き、肩を強く掴まれぐるっと反転させられる。そしてそのままド正面から肩を掴まれ顔を覗かれる。恥ずかしいのでやめてほしい。お願い。

「な、泣いてんすか」
「う、ん」
「何で、そんな、嫌、すか」
「影山くんのこと、好きだなあ、っておも」

最後まで言う前に正面から影山くんに抱きしめられる。影山くんの胸で鼻を打ちつけて痛みで更に目に涙が滲む。影山くんはというと、わたしのことを力いっぱい抱きしめながら嬉しそうな笑みが溢れているのが感じ取れる。

「俺、名前さんの彼氏ってことでいいんすよね?」

ガバッと体を引き剥がされたと思ったら、目を見てそう聞かれる。わたしは心を鬼にして、返事をした。

「約束、してくれますか?」
「何をすか」
「2人きりの時だけ、恋人って約束」
「?」

この時の影山くんの顔が可愛いくて可愛くて、多分この先何年経っても忘れないと思う。

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