影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




おはようございます。はっきりと、明確に、確かにわかることが一つだけあるんですが、わたし昨日相当酔ってました。もちろん恥ずかしいことに記憶はある。だから、自分が影山くんにどんな態度で話してたとか、何を言ったとか言われたとか全部覚えてる。いっそ忘れたかった。

さすがに6個も年下、しかもまだ未成年はアウトすぎません?いや別にまだ既成事実は何もないし、このまましれーっとファンを続ける道は途絶えてないはず。今後影山くんとああやって2人きりで話す機会もどんどんなくなってくるだろうし。影山くんだって多分わたしのこと昔から知ってるから東京の荒波に揉まれて寂しさから情が移ってるはず。だから、昨日のことはお酒の席ということにしてもらおう。大人ならこういうこともよくある。ある、はず。

練習試合は授業が終わってからと聞いていたので、ゆっくり準備をして昨日買った服屋さんにまた出向いた。
2日連続でフルコーデで服を買っている変な客にも店員さんは優しく接してくれて仙台いいとこだなあ、と嬉しく思っていた。

烏養さんに校門前についたら呼べと言われていたので「着きました」と連絡を入れる。
当然烏養さんが迎えに来ると思ってたもんだから、後ろから影山くんに肩を叩かれて心臓が飛び出るところだった。

「名前さん、ちわっす」

影山くんはアップでもしたんだろうか、少し汗ばんでいて色っぽく見えた。だめだめだめ、相手は未成年。そう自分に言い聞かせて心を落ち着かせる。

「影山選手!お疲れ様です」

(わかってる、ごめんなさい)

影山くんが傷付いた顔をしたのはすぐにわかってしまった。ずるい大人でごめんね。でも、これ以上影山くんの人生をわたし如きが共にしていいわけない。「こっちっす」とわたしの前を歩いている影山くんの背中が酷く落ち込んで見えて、胃がキリキリと痛む。

でも、こうするしかないじゃん。
わたしと影山くんの住んでる世界は違うんだし、わたしはずっと影山くんのこと好きでいれるけど、影山くんが現実に気付いた時、辛いじゃないか。

「おーす、名前ちゃん今日ここで試合見な」

体育館に入るとあらゆる方向から挨拶をされ、昨日同様少し驚きながら入る。烏養さんに言われた「ここ」とはコーチの真横の席で、こんないいとこで影山くんの試合見ていいんですか?!と心の底から喜んだ。そう、わたしは影山くんのバレーが見れればいいんだ。欲張っちゃ、いけない。

試合が始まる前、烏養さんから今日のことはSNS禁止なと生徒たちに伝えられこの練習試合が影山くんのご好意であることが伝えられる。
町内会のメンバーはまだ全員揃ってないようで、少しずつ体育館にメンバーが増えつつあった。

「名字ちゃん?!」「名前ちゃん?!」

聞き覚えのある声に振り返って入口を見ると、何度か烏野の公式戦で顔を合わせたことのある2人が驚いた様子で入ってきていた。

「嶋田さん!滝ノ上さん!お久しぶりです!」

思わず駆け寄って声をかけると、滝ノ上さんに頭をぐちゃぐちゃと撫でられる。

「何でいんの?東京住んでんだよな?」
「色々あって、仙台に小旅行に来てて。烏養さんに声かけてもらって昨日と今日練習見させてもらってるんです!」
「へぇー、そうなんだ。じゃ、俺らの応援もよろしく頼むわ」
「はい!任せてください」

とガッツポーズを見せると、後ろから「ダメです」と影山くんの声が聞こえる。驚いて振り返ると、見たことないような厳しい顔つきで持っているボールをぎゅっと握っていた。

「俺以外、見ないで下さい」

それだけ伝えると、くるっとコートの方へ振り返り走り去って行った。言い逃げにも程がある。残されたわたしは恥ずかしくて嶋田さんと滝ノ上さんの顔を見ることができなかった。「へぇ、あの影山が、ねぇ」とニヤニヤ構ってくる2人を放置して烏養さんの元へ戻った。

練習試合が始まり、わたしはいつもより近い距離で影山くんのセットアップを見れて今感動が止まらない。耳をすませば影山くんの息遣いまで聞こえてきそうで自分の心臓の音すらも今は邪魔だった。
あまりにも影山くんが格好良すぎて、息を吸うのを忘れそうだった。

影山くんのサーブ、ベンチから見るのは初めてで思わず体ごと影山くんの方を向いて見つめてしまう。何度見ても惚れ惚れする所作に、わたしはうっとりとため息をついてしまう。バチ、と影山くんと目が合い「あっ」と思わず声が漏れてしまう。その瞬間、わたし達にとって「いつもの」ファンサービスを影山くんがしてくれる。
いつもと違う角度、目線、距離、全てがわたしの興奮を最高潮まで高める要素になった。

「か、かっ、格好いい〜!」

絞り出した言葉は真横の烏養さんに聞こえていたようで「お前らほんと何んなの」と呆れたように言われてしまった。でも今のは誰がどう見ても格好良すぎる影山くんが悪いと思います。

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