影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




赤面して固まってる影山くんを見てまず「かわいい」と呟いてしまい、更に影山くんは真っ赤になってしまった。烏養さんはため息をつきながら影山くんを自分の隣に座らせ、メニューを押し付ける。

わたしはここで、やっと、なんで影山くんがいるんだ?と驚いた。

「なんか飯食ってきたか?」
「軽く新幹線で。でも食います、腹減ってたんで」
「名前ちゃんグラス空だけどなんか飲む?」
「なんで!!!!影山くんここに?!」

思わず少し大きい声が出たが店内にはわたしたち以外の客はおらず、BGMの有線音だけが流れていた。影山くんは特に驚いた様子もなく、テーブルの上にあったわたしと烏養さんの食べ切れなかった残りをもぐもぐと頬張っている。

「名前さんがいるって聞いたんで」
「だ、だれから」
「コーチから」

犯人は目の前にいました。

話を聞くと烏養さんはわたしと今日会った時から影山くんに連絡をいれてたらしい。影山くんが練習終わってこっちに来るこの時間までどうにかわたしを引き止めようとしていたそうだ。そんなことは全く気付くわけもなく、わたしは呑気にお酒を飲んで、あろうことか影山くんの話をずっと聞いてもらっていた。

「んじゃ、影山の腹も落ち着いたとこだし一個ず話してみろ」
「ウス」
「や!やだ!聞きたくない!」

この期に及んで影山くんに目の前でまた同じ話をされるのは正直言ってめちゃくちゃキツい。酔いはだいぶ覚めた気がするけど、そう言う問題じゃないし目の前で泣き喚いてこれ以上嫌われたら立ち直れない。逃げる様に帰ろうとカバンを引っ掴み、立ち上がろうとするとテーブルの向こう側から大きな手が伸びてきてわたしの腕を掴む。

「泣かせてすいません。ちゃんと話すんで聞いてください」

ぐす、と鼻水を啜りながら正面から影山くんの顔を見つめる。その目はいつになく真剣で、有無を言わさない手の力に立ち上がりかけた体をもう一度椅子に戻した。
烏養さんと影山くんはどうやら意思疎通が出来ているようで、わたしだけがまだ状況を理解できていなかった。

「んじゃまず、リオの話からな。影山はなんで名前ちゃんにリオ来んなって言った?」
「そんなの名前さんが危ないからに決まってんじゃないすか」
「は、い?」
「あんな治安悪ぃとこに名前さん連れてけねぇっす」

烏養さんがぬるくなったお茶を飲みながら「うんうん」と相槌を打っている。
ちなみにわたしはまだ何も理解できずにただ、影山くんが話していることを聞いているだけだった。

「はい次、なんでファン辞めて欲しいんだ?」
「それは、その、あれっす」

全身が緊張でガチガチになるのがわかる。影山くんも言いにくいのか、何度か視線を泳がせて話し出そうと口をもごもごと動かしている。
わたしも思わずごくり、と生唾を飲みこんだ。体はお酒で火照っているのに手が緊張でキンキンに冷えている。

「ファンには手出すなってマネージャーに言われたからっす」

店内には有線のBGMと、耐えきれずに吹き出した烏養さんの笑い声が響いていた。

- 19 -


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -