影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




 わたしは今、なぜか、自分でも本当にわからないけどなぜか仙台にいる。昨日自宅に帰らずに気付けばそのまま新幹線に乗り込み駅前のホテルに一泊し、ホテルで浴びるように酒を飲み泣きながら寝た。いい年して恥ずかしすぎる話だが、実話である。仕事?何それ?有給はこういう時に使うんだよ!!

軽く二日酔いのまま駅前のモールで新しく服を買い、昨日来ていた服を見ていると昨日のことを思い出してしまうのでそのままゴミ箱に捨てた。
本当はこのまま髪型も変えてなんなら整形もしたい。影山くんにわたしだとバレなければファンを続けてもいいのでは?そして脳内は結局影山くんのことを考え、平日の真っ昼間から道端でしくしく泣いてる痛い女になっていた。

こういうのを傷心旅行とでも言うのか。さすがに校内には入れないだろうけど烏野高校をせっかくなので生で見たい。公式戦しか今まで見たことないので仙台体育館には何度か足を運んだことはあるけど、ここまできたら烏野高校拝みたい。行く宛はなかったが目的地が出来た今、タクシーに乗り込み行き先を伝える。

「烏野高校までお願いします」

謎の緊張からふぅ、と深呼吸をしスマホを開くと待ち受けの影山くんと目が合いまた目に涙が浮かぶ。わたし、影山くんのファンじゃなくなったら生きていけない。

タクシーの心地よい揺れにうとうとしていると、目的地手前に着いたそうで起こされる。どうやらこの先は車両の走行は禁止らしく商店の前で降ろされた。ちょうど喉も乾いたし、飲み物でも買おうかなと商店に入るが店員さんらしき人物が見当たらない。

「すいませーん」
「あ〜今行きます」

カバンの中から財布を探し、小銭を取り出しながら目の前のレジの店員さんと目が合う。

「「烏養さん?!?」「名前ちゃん?!?!」

目の前に立っていたのは烏野高校コーチの烏養さん。驚きすぎてお互い見つめ合ったまましばらく無言になる。

「あ、お久しぶり、です」
「おー。春高ぶりか?」
「そう、ですね!そういえばもうすぐインハイ予選ですよね!今から新生烏野楽しみにしてます」
「そういや今期もありがとうな。いつもすっげぇ助かってます」
「いやいや!烏野高校の大ファンなので、今年は予選から見にいけたらいいなって思ってます」
「おー、来い来い。そういや影山元気か?」

その言葉にぶわっと目頭に熱が集まりぼたぼたとカウンターに涙を落としてしまった。自分でも驚いてぐっと涙を堪えるも間に合わず烏養さんが見かねてティッシュを渡してくれる。

「あー、ウン。なんか悪ぃ」
「っ、いえ、だいっじょぶです」

何も聞いて来ない烏養さんの優しさが余計に身に染みて、なけなしのプライドで止めかけた涙が止めどなく溢れてくる。

烏養さんとは烏野高校が寄付金を募ってると聞いて、連絡したのがはじまりだった。そうか、烏養さんとの付き合いもなんだかんだもう4年くらい経つのかと思うと、やっぱりまた影山くんのことを思い出して悲しくなってしまった。

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