影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「リオまで来なくていい」ハッキリと聞こえたその言葉は、もちろん聞こえていたし理解もできたけど納得は、出来なかった。
影山くんがどういう意図で言ってきたのかもさっぱりわからないし、わたしの何かが影山くんを不快にさせてしまったのだろうか。
考えても考えてもキリがなく、お風呂の中では思わずぽたぽたと涙を溢してしまった。

夜はだめだ。ネガティブなこと考えすぎてしまうし、明日影山くんに落ち着いてどういう意味かちゃんと確認しよう。影山くんは口下手だし、きっと何かわたしの思い付かないような意図があるはず。そう信じるしか今の自分のメンタルを保つ方法はなかった。

今日は会場についてからも周りの人たちに心配されるほど、わたしの気分はどん底だった。せっかく昨日と打って変わって勝利を収めたのに心の底から喜ぶことができなかった。そのことも辛い。自分の気持ちを切り替えることができないまま試合を観戦してしまい、この試合もっと楽しんで見れたはずなのに勿体ないことをしてしまったと反省をする。

(あー、行きたくないな)

試合も終了し影山くんに早く話を聞きに行きたいのに、動かない自分の足にもうすでに心が折れそうだった。
どんどん減っていく周りのファン達、時折影山くんは心配そうな顔でわたしのことを見てくる。そんな顔してくるのにどうして昨日あんなこと言ったの?どういう意味だったの?そう早く聞いてしまいたい。でも、怖い。その葛藤の繰り返しだった。

とうとう誰もいなくなってしまった影山くんのエリア。マネージャーさんが影山くんに戻るように声をかけるが首を振っている。さすがにこれはまずい、とわたしは重たい腰を上げ影山くんの元へ向かった。気持ちは最悪だし、緊張で喉はカラッカラだし、変な汗はかいてくるし最低最悪の気分だった。

「名前さん体調よくないっすか?大丈夫すか?」
「だ、大丈夫」

お前のせいなんだよな!!!!!と言えるはずもなく精一杯の空元気の笑顔を影山君に見せる。
当たり障りのない会話をし、いつどのタイミングで影山くんに昨日のリオの話を振ろうかと考えていた時「あの、」と珍しく影山くんから話そうとしてくる。少し嫌な予感がしつつも会話の続きを待ってみる。

「俺、名前さんに言おうと思ってたことがあって」

はい、と出した声は喉の渇きから乾燥していてもうほとんどそれは発声できていなかった。
影山くんの声より自分の心臓の音の方が大きく感じた。

「俺のファン、辞めてもらってもいいですか?」

さっきまで騒がしくて聞きづらかった影山くんの声がやたらクリアに聞こえたかと思うと、それ以降はもう何も聞こえなかった。そこからどうやって影山くんの前から立ち去り会場を出たのか記憶が全くない。

そしてわたしは今、なぜか仙台駅にいる。

- 15 -


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -