影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




週末から週明けにかけての怒涛の影山事件は一旦幕を引き、通常の生活に戻った。
が、朝からテレビニュースでは影山くんがオリンピックの代表に選ばれたことが話題になっておりわたしも大興奮で朝から何番組もテレビニュースを録画していた。

職場でもニヤニヤが止まらず、わたしが影山くんの追っかけをしている面々は「おめでとう」とまるでわたしがオリンピックに出るかのように言ってきてくれてとても嬉しかった。
わたしは昼休み中に何度も東京-リオの往復航空券の値段を調べ、現地のホテルなどを調べ倒していた。
(…わたし、行く気満々なの怖くない?)

「チケット先行もう終わってんじゃん!」

出場メンバー決まる前からチケット先行申し込み終わってるの鬼畜すぎない?まさか影山くんが2年目でオリンピック出るだなんて夢にも思ってなかったから全然何から手付けていいかわかんない。

そこから数日間スマホとパソコン両方で必死に情報収集し、なんとか交通手段、宿泊先、チケットの目処がついた。予算は大幅にオーバーしているが致し方ない。
週明けにでも旅行会社へ行って入金しないと。

気付けば週末になっており、今日もアドラーズの試合を見に行く。試合も早く見たいし、早く影山くんにおめでとうを伝えたくてうずうずしてきた。

「「おめでとう〜〜〜〜!!!!」」

友人と会場で出会った瞬間お互いに熱い抱擁をする。何ならちょっと泣いた。牛島選手と影山くんは同郷ということもありわたしと友人はいつも勝手にシンパシーを感じている。
そんな中、お互いの推しがオリンピックに招集される。そんな素敵なことがあって良いのか!嬉しくて、2人でもう一度顔を見合わせガバッと抱き合う。

「ねえ、名前ちゃん、行く?」
「一応行ける様に下調べはしたよ。あとは入金だけ…」
「やっぱ行くしかないかな?!でも治安悪そうだし、迷ってるんだよね」
「うーーーー。でも影山くんがJAPANのユニ着るのに生で見る以外の選択肢ない…」
「それな〜?!若利くんのJAPANユニとか生で見たら死んじゃう」
「お互い強く生きような」

やっぱり治安、悪いよなあ。でも行きたい。実際行けない訳ではない。有給だって余ってるし、お金は夏のボーナスがどうにかしてくれる。こう言う時に彼氏の1人いれば一緒に行こうと誘えて尚且つ用心棒にでもなってもらえそうなのに。
流石にリオオリンピックまでに彼氏作るのは不可能な気がするし、彼氏を作った上でリオに連れて行くのは無謀だ。

「出てきたよ!」
「今日も綺麗…」

はあ、とため息をつきながら思わず両手で影山くんを拝んでしまった。隣にいる友人が思わず吹き出すと、影山くんがこっちに気づいたのか頭上にクエスチョンマークを浮かべながら手を合わせてこちらに会釈をしてきた。

「ちょっと!影山くん何あれ!?可愛くない?何?天然なの?若利くんとキャラ被ってんジャン!」
「えっ、な、何今の」
「いやそれはこっちが聞きたいんですけど。普通にいちゃつくのやめてもらっていい?」
「恥ずかしすぎて無理」

影山くんの突拍子もない行動に周りも少しざわついており、わたしは背中を丸めてできるだけ小さくなった。穴があったら入りたい。
友人は隣で牛島選手に手を振っており、もう既に牛島選手しか目に入っていない様子だった。

今日の試合は思うように進まず、久しぶりにストレート負けだった。最近勝ち試合ばかりを見てきたので、久しぶりの悔しい気持ちも大きな声で言えないけど少し嬉しかった。
自分のこと以外でこんなに夢中になれて喜んだり悔しかったり、本当にいつも影山くんには感謝しかない。影山くんのことを知れてよかったって、きっと来年も再来年も、10年後も思うんだろうなと漠然と感じた。

「影山選手!今日もお疲れ様でした。試合は悔しかったですけど、今日も美しかったです…!」
「アザス」

負けた日の影山くんはいつにも増して寡黙でそれはそれでかっこいいので良い。

「それと!オリンピック代表入り!おめでとうございます!」
「、アザス!もう公表されてるんすね」
「ニュース見て家で叫びました。もう本当に嬉しくて。影山選手のことずっと見てこれて嬉しいな、って改めて思いました!」
「俺も、名前さんにそう思ってもらえて嬉しいっス」
「それで、今とりあえず航空券と向こうのホテルは抑えたんですよ〜!もう楽しみで楽しみで」

と思わず興奮してしまい、影山くんの手を強めに握ってしまった。すぐ申し訳なくなり強めに握った手を緩め、影山くんに「すいません」と伝えると影山くんは少し考え込んでいるようでわたしの声は届いていなかった。あれ?と思いながらいつも通り影山くんが話し出すのを待つことにする。ぎゅっと力強く手を握られて驚く。「名前さん」と少し低い声で名前を呼ばれ肩がビクッと揺れる。

「は、ハイ!」
「来なくて、いい。デス」
「、え?」
「だから!リオまで来なくていい。デス」

影山くんから何を言われたか理解したと同時に涙が出そうだった。あれ?わたし何かしたかな。必死に泣くまいと笑顔を作り「とりあえずまた明日も来ますね」とスルーしてその場を去った。家までどうやって帰ったのか記憶がない。

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