影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「少しなら」

と伝えた瞬間影山くんは今まで見てきた中でも割と上位の嬉しそうな表情を見せてくれて思わずわたしも顔が綻ぶ。

「じゃあ、すぐタッパーにいれてくるので待っててもらえますか?」
「家行ったら、ダメすか」

いい加減に、してほしい。これ以上わたしに影山くんのことを断らせないで欲しいし、断った後の影山くんのしゅんとした顔に罪悪感でどうにかなりそうだった。
このまま押し問答を続けるとさっきの二の舞で家にあげることになりかねなかったので、無理やり話を切り上げて1人で部屋に戻ることに成功した。

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

と、一際大きなため息をつきながらタッパーにカレーを一食分移す。

まああれだ。影山くん上京してきてるし、案外寂しいのかもしれない。わたしのこと高校時代からなんとなく知ってるって言ってたし多分わたしのこと見たら高校生活思い出して寂しくなくなるんだろうな。だからお母さん的な?立ち位置で?カレーを?食べたくなったのでは?とほぼ無理やり自分の気持ちを納得させながら溢れないようにタッパーを包む。

(というか、ロードワーク中ならこのカレー邪魔では?)

やっぱり家でサクッと食べてもらった方がよかっ、いやいやよくねーわ。もう朝から影山くんの行動に驚きっぱなしで危うくこちらも珍行動をしてしまうところだった。

再びマンションの下へ降りると影山くんは手持ち無沙汰だったようで、うろうろと歩き回っていた。可愛い。可愛いな。

「ごめんなさい!お待たせしました」
「俺も無理言ってすいませんした」
「タッパー捨ててもらって大丈夫なので!お口に合うといいんですけど」

タッパー返しに来られても困るので、お願いだから捨てて欲しい。そしてもう二度とここへは来ないで欲しい。わたしが会いにいくのはいいけど、影山くんに会いに来られるのは正直困ることしかない。

「っス、じゃあまた」

まだ何か言いたげな様子だったが、そろそろ仕事の時間もあるのでとやんわり伝えると影山くんは素直に帰って行く。可愛い。

わたしも家に戻り急いで出勤の準備をする、言うまでもなく今日の仕事は何一つ集中できなかった。

仕事から帰宅し、冷蔵庫を開けると大量の「ぐんぐんヨーグル」が入っており今朝の出来事が夢ではなかったことを思い出す。そういえば烏野時代にも何度かこっそり差し入れでぐんぐんシリーズ渡してたなあと懐かしくなる。もちろん影山くんをはじめ、生徒の皆さんには内緒にしてもらっていたが喜んでいたと聞くだけで嬉しかった。

そう、その頃の気持ちをわたしは思い出さないといけないし忘れてはいけない。これ以上影山くんに何か感情を抱いてしまう前に以前の自分に戻らないと。そんなことを悶々と考えながら眠りについた。

そして次の朝、またインターホンが鳴る。
- 12 -


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -