影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




帰宅してからも影山君の言葉が脳内から離れず、何も手につかなかった。
と、言いつつもお腹は空くもので昨日の夜から準備していたカレーを大盛りで食べる。

「はぁ、困ったな」

カレーをもぐもぐ食べながらわたしは録画してあった影山くんの試合をテレビで見る。
影山くんのプレーは本当に綺麗で、見てるこっちも背筋が伸びてくる。そんな素敵な選手と出会えて幸せだし、これからもバレー選手として応援したい。これ以上距離感を間違えたら、男の人だと意識してしまいそうで怖かった。

影山くんとは年齢もそこそこ離れているし、何せ高校生の頃から一方的に知っていたので男性というよりは男の子、だと思っていた。

「やめやめ!たかが追っかけが何言ってんだって話を烏滸がましい」

家の中に1人だと言うのに誰に言い訳をしているのか、そう呟いて今日は早々に寝ることにした。

朝を迎えても気持ちはそこまで晴れ晴れとせず、やはり昨日のモヤモヤが脳内を占めていた。
出勤の準備を終え、朝食の準備をしているとインターホンが鳴る。この時間に郵便や宅配が来ることはほぼなく、不思議に思いながらインターホンに出る。

「はーい、名字です」
「あ、おはようございます影山っす」

ガチャン

勢い余って思わず切ってしまった。はて?さて?わたしの知り合いに影山っていたかなあ〜。うん、いないですね。1人を除いて。

数秒おいてもう一度インターホンが鳴り、「ふぅ」と次は深呼吸をしてから対応をする。

「お、はようございます」
「っス。昨日のお礼持ってきたんで受け取ってもらえないですか」
「え?と、とりあえず降ります!」

影山くんの行動力に驚きながらも玄関の姿見で全身チェックをし、急いで家を出る。
もしかしたら本当にご近所さんだったのか?と昨日の疑いを申し訳なく思い、マンションの下に降りる。

待っていた影山くんは上下ジャージで、どこからどう見てもロードワーク中だった。えっ、かっこいい...と朝から脳内が爆発しそうな中精一杯の冷静を装い声をかける。
影山くんはというと、わたしの姿を見るや否や手に持っていたビニール袋を差し出してくる。

「いきなりすんません。でも昨日結局なんにもお礼できなかってんで」
「本当に気にしないでください!こんな、頂けないです!」
「名前さんそういうと思って物はやめたんで、よかったら飲んでください」

ビニール袋の中を見ると、以前から影山くんが好きだと公言しているぐんぐんヨーグルが入っていた。思わずコンビニで爆買いしてる影山くんを想像してしまい愛おしさから笑みが溢れる。

「それ、美味いんでおすすめデス」
「ありがとうございます、ふふ」

思わず隠しきれず笑ってしまうが、影山くんは何故笑われたかわからずきょとんとしている。
ありがとうございます、とお礼を伝えその場を去ろうとすると影山くんの大きなお腹の音で引き止められてしまった。

「すんません!名前さんからなんか旨そうな匂いがしたんでつい」
「多分朝からカレー温め直してたので、匂い移っちゃったかもです」

影山くんは恥ずかしそうに頭をかいていたが、わたしだって恥ずかしい。まさか影山くんに自分についてるカレーの匂いを嗅がれる日が来るだなんて思いもしていなかった。

昨日の今日で正直勝手に気まずい気持ちはあったが、いつも通り話せている自分に安心した。

「ロードワーク中ですよね?頑張ってください!」

じゃあ、と再び別れを告げようとするもまた影山くんの言葉に遮られる。

「名前さんのカレー食いたいっす」
「だ、ダメです!!!!そんな、人様に食べさせれるレベルではないですし、影山選手の体に何かあったら責任取れません!」
「食いたいっす」
「だ、ダメです」
「名前さん、ダメ、すか?」

しゅん、と項垂れた子犬のような影山くんの姿に思わず「少しなら」と謎の言葉を吐いてしまった。だってこんな可愛い影山くんにお願いされたら断れないでしょうが!どこの世界に影山くんのお願いを断れる強靭な精神力を持った人間がいてるんですか。いたら紹介してください。


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