影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




「俺もここなんで」

と涼しい顔して降りた影山くんのことをわたしは9割疑っている。そんな偶然起きるはずがない。ただ逆の立場だとメリットあるけどこれ、影山くんにメリットある?なくない?
もうどうにでもなれ、と半分はヤケクソでもう影山くんに何を言っても「同じです」と言われてしまう気がしたので当たり障りない会話をしながら帰路につく。
南口か北口かを問うのはやめました。

まあ、影山くんきっと責任感強そうだし本当にわたしのこと心配で送ってくれてるんだろうな。申し訳ない。本当に申し訳ない。

「家、ここです。結局送ってもらっちゃって本当にすいません」
「いや、俺もたまたま帰り道一緒だったんで気にしないでください」
「ふふ、ありがとうございます」

あまりにも影山くんが堂々と嘘を付くのでちょっと可愛くなってしまい思わず笑みが溢れる。
影山くんも自分が嘘をついてることにわたしが気付いてるとわかっているようで、少し目を泳がせながら「スイマセン」と小さな声で謝罪した。

「名前さんの家を知りたいとか、そういうのじゃなくて、本当に心配で」
「わかってますよ!影山選手のことそんな人だと思ってないですし、わたしがむしろ首突っ込んじゃってすいませんでした」
「っス。でも俺、名前さんともっと話したいってずっと思ってたんでよかったっす」

今度はわたしが目を泳がせる番だった。なんて返事をしていいかわからず、挙動不審な態度をとってしまう。
影山くんはそこから畳み掛けるかのように話し出して、いつもとは反対でわたしが話を聞く番になった。

「今日ウシワカ、牛島さんとこ行ってる名前さんみてすっげぇ寂しくて」
「っ、う」
「いつも試合終わって名前さんが笑顔で待っててくれんの俺にとっては結構ジューヨーっつか、嬉しくて」
「え、あ」
「これからも試合手ぇ抜くとかはありえねんすけど、名前さんには俺のことずっと見ててもらいたいっつーか」

もう本当に死ぬかもしれない。誰か今すぐ救急車呼んでもらっても?
わたしが赤面しながら死にかけていることをもちろん影山くんは気づかず追い討ちをかけてくる。

わたしは緊張と恥ずかしさから肩に掛けてるトートバッグ紐をギュッと両手で握りしめている。そこへ影山くんの大きな手が伸びてきて、手を握られる。影山くんの手が大きすぎてもはや上から手を包まれているようだった。

いつもの握手とはまた違い、影山くんはあの綺麗な指でわたしの固く握られた指を一本ずつ解いていく。触られた指はいっきに熱を持ち、気づけば全て解かれ胸の前で指を絡みとられる。側から見れば恋人同士のような空気にわたしはギリギリのところで耐えていた。真剣な影山くんの表情に、ごくりと唾を飲み込む。

「俺のこと、ずっと好きでいてください」

わかってる、ちゃんと、そういう意味じゃないと、わかっている。けど、切なくて胸が痛くてわたしは今にも泣き出してしまいそうだった。


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