影山選手の追っかけはじめました。 | ナノ




はじめての子育て、はじめての海外移住。この2年間でわたしはかなり成長したと思うし、強くなったと思う。ローマから家族で帰国し、東京オリンピックに備えて日本での生活がはじまった。

帰国してから息子は人見知り、場所見知りがひどくどこでもわんわん泣いていたがそれもすっかり落ち着き、今は好奇心が勝つようでどこでも走り出そうとして大変だった。

「大丈夫ですか?お手伝いしましょうか?」
「あ、ありがとうございます!こら!飛空(とあ)、走らないの〜!」

見ず知らずの女の子が声をかけてくれ、会場内でうろちょろ走り回る飛空と手を繋いでくれる。わたしは大きいお腹で下がうまく見えず階段を降りるのがかなり慎重だったので、とても助かった。

「ママ、りおちゃんどこ?」
「莉緒ちゃんもうすぐくるよ。ほらお姉さんにありがとうして」
「あーとー!」
「あ、あの!もしかして、影山選手のご家族の方ですか?」
「ふふ、飛空くんご挨拶できる?」
「かげやまとあくんです!2しゃいです!」
「か、可愛い!!!!!いつも応援してて、その、今日も日本が絶対勝つって信じてます!」
「こちらこそ、主人の応援いつもありがとうございます」
「えっと、写真とかって...」
「SNSとかに載せないのであれば構いませんよ」
「奥様も一緒でもいいですか?!」
「わたしもですか、?!」
「影山選手のこと、ご家族ぐるみで推させてもらってるので!もしよければ...!」

真っ直ぐな目を見て思わず昔の自分を思い出す。少し照れながら3ショットを撮ってもらいその場で別れるとすぐに莉緒ちゃんがバタバタと走りながら現れた。

「飛空ー!!!会いたかったよ〜〜〜!」
「ママ!りおちゃん!」
「莉緒ちゃんとおてて繋いで」
「みて!とあくん!パパなの!」

莉緒ちゃんに会ったら見せると朝から大興奮の飛空。実は特注で作ってもらった飛雄くんのユニフォームを着ており顔立ちも飛雄くんそっくりなのでミニ飛雄くんになっていた。

「可愛すぎない?????天使?」
「パパばんがろうね〜!」
「うん、頑張ろうね〜」

2歳にしてはお喋りな飛空はパパ大好きっ子に育ち、暇さえあれば家で飛雄くんのバレーの映像を見せろと言ってくる。わたしとしては嬉しい限りだけど、幼児が好きそうな番組よりパパの動画を見たがるのでわたしの遺伝子が濃すぎたかなとたまに恥ずかしくなる。

そして今日の試合は日向くんもいてる。日向くんも帰国後よく遊びに来てくれるので飛空がかなり懐いており、今日も会場でポスターを見かけるたびに「パパとしょーちゃん!」と嬉しそうに指差していた。

「ほら、飛空見て。パパ出てきたよ」
「パパだ!!かっこいいねぇ!」
「うん!パパが1番かっこいいね〜!」
「いや、若利くんが1番かっこいいから!」
「パパだもん!」

2歳児と言い合いをする莉緒ちゃんが面白くて思わず笑ってしまう。

「影山くんは終わったらすぐ帰るんだっけ?」
「いや、とりあえずこの子が産まれるまではこっちいれるみたい」
「えー!よかったね!」
「さすがに飛空とわたし2人で出産はきついから、本当によかった」
「わたしもかなり成長したので、次は立ち会えると思う!」
「それはそれで恥ずかしいんだけど」
「3人目はわたしが取り上げたいな〜!」
「まだ2人目も産まれてないよ」

2人で目を見合わせて笑い、飛空が不思議そうにこっちを見ている。

飛雄くんのバレーを初めて見てから約8年。長いようで一瞬だったこの8年間。オリンピックの会場にいてる飛雄くんを見て感慨深くならないわけがなかった。飛雄くんのバレーに惹かれて、飛雄くんに惹かれて。わたしは多分、飛雄くんに出会うために生まれてきたし、飛雄くんを幸せにするために生きてきたと言っても過言ではない。飛雄くんが幸せだとわたしも幸せ。この8年間のことを色々思い出しながらコートを見ていると、飛雄くんが不意に振り返ってこちらを見る。

「パパ〜〜〜!!!!!」

飛空が嬉しそうに手を振ると、飛雄くんも満面の笑みで手を振っていてああ、幸せだなぁと噛み締める。

影山名前は今も昔もこの先も、きっとこれからずっと世界で1番幸せです。

〜完〜
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