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 私の髪の毛を掴み上げ、顔を覗き込むようにしゃがむ顔を包帯でぐるぐると巻いた黒装束の男。


「君は、忍術学園の…尊くん」

 掴まれていた髪が離されると同時に首に回されていた手も離れ、待ち望んでいた空気が盛大に肺に入り込み反動で咳が出た。
 咄嗟に口に手をあてたが、指の間からこぼれた空気が地面に広がった髪を揺れらす。呼吸がまだ落ち着かないので肺が痛い。だが、彼らの声を逃してはならないと、無理矢理息をひそめた。

「どうします?」
 若い男は跨ったまま私の両腕を縄で拘束してから、立ち上がった。


「うーん、……後輩に手を出したとなると伊作くんに恨まれちゃうねぇ」
 バラバラに散っていた髪の毛をまた掴み上げられ、膝立ちにされる。



「まぁ、恨まれてもいいけどね」

 包帯に覆われた赤黒い肌はただれて痛々しさを物語っていたが、病人らしからぬ三半眼の黒い瞳は雄々しく凍てつくような鋭さに溢れ、一瞬で、この人は人を殺せるんだと理解した。理解して、気付けばブルブルと体が震えていた。
 殺される。


「ふん…残念」
 おざなりに手が離されて、乱れた髪が顔にかかるがそれすらも気にならなくなるくらい震えが止まらない。


「お前は何をするためここにきたんだ…?」

「あ、女の子を」
 男達が歩いている方向を見やった2人は眉間に皺を寄せ私を見る。

「女の、子を、助けようと…」
 白装束の若い方の男性が声を潜めながら身を低くした。


「助けるために跡を付けてたのか?」

「はい」

「誰に頼まれた?」

「だ、誰にも、頼まれてないです」

「こんな目立つ格好と棒で自発的に助けようとした?馬鹿じゃないのか!?」

 この身を案じるような発言は縄で縛ってきたり頬を切ってきたりした彼らの行為と一致しない不自然さはあるが、言い返せなかった。代わりに涙がにじむ。



「…君、本当に鉢屋くんと双忍をやっているのかい?」





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